『虎に翼』モデルの三淵嘉子はどんな人? 女性法曹の先駆者として波乱万丈の生涯

『虎に翼』モデルの三淵嘉子はどんな人?

 嘉子は二度結婚している。一度目は、1941年(昭和16年)。武藤家の書生をしていた和田芳夫と結婚し、長男を授かった。芳夫は穏やかな性格で嘉子の仕事にも理解があった。しかし、出征した帰途で病死してしまう。二度目の結婚は1956年(昭和31年)で、再婚相手は同僚で同じく裁判官だった三淵乾太郎。乾太郎の父の三淵忠彦は戦後、大審院に代わって設立された最高裁判所の初代長官として知られる。

 二度の結婚を経て嘉子は5人の息子と娘の母となった。家庭裁判所で悩める少年少女の導き手として5千人を超える少年審判に関わった嘉子は、家族にだけ見せる表情があったようだ。妻、母としての横顔がドラマでどのように描かれるか注目したい。

 戦争は嘉子の人生に大きな変化をもたらした。弟の一郎は戦死、夫の芳夫も帰らぬ人となり、両親は戦後の混乱期に相次いでこの世を去った。我が国の法体系は終戦を境に一変する。天皇主権の明治憲法から国民主権の現行憲法へ。民法、刑法をはじめ主要な法律が生まれ変わった。「私の人間としての本当の出発は、敗戦に始まります」と嘉子は記している。戦争が嘉子から奪ったものは測り知れない。嘉子の戦争に対する思いは、後年の原爆裁判に結実していく。

 女性法律家の先駆者として、妻、母として、戦後日本を生き抜いた三淵嘉子の足跡は多くの示唆を与えてくれる。『虎に翼』を観る私たちは、主人公の生き方を通してたくさんの勇気をもらえるはずだ。

参考

佐賀千惠美『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)
清水聡『三淵嘉子と家庭裁判所』(日本評論社)
青山誠『三淵嘉子 日本法曹界に女性活躍の道を拓いた「トラママ」』(KADOKAWA)
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版」

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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