『デューン 砂の惑星PART2』は前作以上の面白さ ゼンデイヤが最後に見せる表情が絶品

『デューン 砂の惑星PART2』の面白さ

 そして本作はSFであると同時に、貴種流離譚、もっと言えば白人酋長モノとしての側面がある。最先端の科学の世界に生きる落ちぶれた貴族の青年が、未開の地の原住民の中で救世主として崇められ、やがてリーダーへと成長していく。これは『アバター』シリーズ(2009年~)などにも見られる白人酋長モノの定型だと言っていい(『デューン』の方が先行作なのだけど。原作は1960年代だし)。アメリカで大ウケしたのも、この辺の要素が強いからだろう。しかし「あんたも好きねぇ」と加藤茶ばりに油断していると、本作では救世主を崇めることの危うさ、信仰心の持つ危険性を鮮烈に突きつけてくる。ガンギマリの目で民衆を導くポールと、そんなポールに同じくガンギマリで熱狂する民衆は、ひと言で「正義」とは括れない。特に最後の最後にチャニが見せる「ないわぁ」という表情なんて絶品だ。これは実写で生身の人間が演じるからこそ、表現できるヤバさだろう。エンドロールに突撃する頃には「うわぁ……なんか取り返しのつかないことが始まっちゃったよ」とすっかり引き込まれていた。

デューン 砂の惑星PART2

 ただ、相変わらず好き嫌いが綺麗に別れる作品だとも思う。またしても「俺たちの戦いはこれからだ!」的な終わり方をするし。しかし前作が気に入った人はもちろん、『ちいかわ』や『プロレス・スターウォーズ』みたいな表現になるが、「なんか凄くてヤバくて取り返しのつかない話」、あるいは「よく分かんないけど、とにかく凄そうな映画」が好きな人にもオススメしたい。

■公開情報
『デューン 砂の惑星PART2』
全国公開中
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
撮影:グリーグ・フレイザー
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト: dune-movie.jp
公式X(旧Twitter):@dunemovie_jp

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