『マダム・ウェブ』大苦戦 今後スーパーヒーロー映画に求めるべきものとは?

『マダム・ウェブ』大苦戦

 2月第4週の動員ランキングは、先週に引き続き『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が圧倒的な強さでトップを独走。週末3日間の動員は78万1000人、興収は11億2000万円。2月25日までの10日間の累計動員は290万人、興収41億8100万円。リピーター需要も強く、まだまだ天井が見えない興行が続く見込みだ。

 初登場作品で最上位の2位につけたのは、内田英治監督、土屋太鳳、佐久間大介(Snow Man)出演の『マッチング』。オープニング3日間の動員は20万3000人、興収は2億9600万円。監督自身によるオリジナル脚本作品、邦画大手3社に続くKADOKAWAの配給作品ということをふまえると、初動で3億円に迫る成績は大健闘と言っていいだろう。もっとも、好成績にもかかららず『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』が公開される今週末からは上映スクリーンがかなり減らされる見込みで、大手3社以外の日本映画のロングラン興行の難しさを指摘せずにはいられない。

 トップ10唯一の外国映画として初登場5位となったのは、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの最新作『マダム・ウェブ』。オープニング3日間の動員は10万6500人、興収は1億6400万円。この成績は直近のマーベル作品である2023年11月公開のディズニー配給作品『マーベルズ』の初動興収比で51%。ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの前作である2022年4月公開の『モービウス』の初動興収比で67%となかなか厳しい出足。ちなみに前者の最終興収は7億円台で後者の最終興収は5億円台。2010年代を通して世界的にあれだけ隆盛を極めたスーパーヒーロー映画も、今や興行のスケールとしてすっかり「普通の洋画」となってしまった。

 もっとも、『マダム・ウェブ』はユニバース作品ならではのイースターエッグ的な要素も少なく、スーパーヒーロー映画ではお約束のファンサービス的なミッドクレジットシーンやポストクレジットシーンもなく、作品の仕上がり自体が良くも悪くも「普通の洋画」的な作品となっている。

 今後、年内に公開されるソニーズ・スパイダーマン・ユニバース作品としては『クレイヴン・ザ・ハンター』、そして『ヴェノム』の3作目が予定されているが、1作目と2作目の脚本を手がけたケリー・マーセルが監督として初登板する『ヴェノム』の3作目はともかく、『クレイヴン・ザ・ハンター』の監督はこれまで社会派寄りのシリアスな作品ばかりを撮ってきたJ・C・チャンダー。その人選からして、もうソニーにはブームが去ってしまったこれまでのスーパーヒーロー映画の路線を踏襲していくつもりはないのだろう。我々観客はスーパーヒーロー映画が「普通の洋画」になってしまったことを嘆くのではなく、今後は「普通の洋画」としての良作が生まれることを期待すべきなのかもしれない。

■公開情報
『マダム・ウェブ』
全国公開中
監督:S・J・クラークソン
出演:ダコタ・ジョンソン、シドニー・スウィーニー、イザベラ・メルセド、セレステ・オコナー、タハール・ラヒム、エマ・ロバーツ、アダム・スコット
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© & ™ 2024 MARVEL
公式サイト:https://www.madame-web.jp
公式X(旧Twitter):https://x.com/MadameWebJP

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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