『光る君へ』吉高由里子の眼の芝居が凄まじい “決別”を予感させる一羽の鳥にも注目

『光る君へ』吉高由里子の眼の芝居が凄まじい

 『光る君へ』(NHK総合)第8回「招かれざる者」。源倫子(黒木華)たち姫君は、打毬の話題で持ち切りだ。しかしまひろ(吉高由里子)は藤原斉信(金田哲)らの心ない言葉を聞いており、心穏やかでなかった。そんな中、宮中で藤原兼家(段田安則)が倒れ、道長(柄本佑)ら兄弟が看病にあたる。

 物語冒頭、倫子ら姫君の集いで、貴族の姫である茅子(渡辺早織)としをり(佐々木史帆)は打毬で活躍していた藤原公任(町田啓太)や道長の話題で盛り上がる。しをりから「やはり倫子様も道長様ね」と言われた時、倫子は返事をせずに微笑むだけだった。そんな倫子を見るまひろは、倫子の心の微細な変化を察したように見える。倫子の微笑みは普段と変わらないおしとやかさがあったが、倫子のどこか気恥ずかしげな佇まいから道長への胸のときめきが伝わってくる。姫たちの前で言葉を濁すも、うっとりした倫子の表情が恋心の芽生えを物語る。

 その頃、倫子の父・源雅信(益岡徹)は、兼家から道長を婿入りさせてもらえないかという申し出を受ける。花山天皇(本郷奏多)の叔父で急速に出世する藤原義懐(高橋光臣)の力を抑えるためには、関白の藤原頼忠(橋爪淳)、左大臣の雅信、右大臣の兼家が手を結ぶことが重要だ。

 とはいえ、道長の位がまだ低いこと、雅信自身が右大臣家に好意を抱いていないこともあり、雅信は愛娘と道長の結婚に気が進まない。一方、倫子は母・穆子(石野真子)から道長との縁談について聞かされると、ぽっと頬を染め、恥じらう身振りを見せる。母・穆子はこの姿だけで、倫子の胸中を察したことだろう。

 反対に父・雅信は愛娘の心情に配慮せず、「なんだ、そのまんざらでもない顔は」と言った。倫子は恥ずかしさを覚え、「まんざらでもない顔など、しておりませぬ」と怒ってその場を去る。動揺し、珍しく感情的になった倫子だが、声を荒らげるのではなく、言葉尻に少しだけ感情があらわになるような物言いに品の良さを感じる。倫子は一人、部屋にたたずみ、「道長様」と呟いた。その恍惚とした表情は、倫子が恋に落ちたことを十二分に表すものだった。

 人が恋に落ちる時を魅力的に描いた第8回で、憎しみを抑えて道兼(玉置玲央)と対峙するまひろの強さにも心惹かれた。

 道兼はまひろにとって母・ちやは(国仲涼子)を殺めた仇である。そんな道兼が為時(岸谷五朗)を訪ねてまひろの家に突然現れた。動揺したまひろは、目を見張ったまましばらく動けなかった。まひろは自分の部屋に逃げ込むと、力なく座り込む。乱れた呼吸を整えるまひろの目に映ったのは、ちやはが遺した琵琶だった。

 道兼と為時の前に、まひろがちやはの形見の琵琶を持って現れる。粛然とした佇まいに、まひろの覚悟を感じた。琵琶の音を響かせながら、まひろはちやはの姿を思いだす。その目は潤んで見えた。亡き母を思いながらの演奏は、道兼の心を打った。道兼はまひろの演奏を見事だと褒め、誰に習ったのかと尋ねる。母だと答えるまひろに道兼は続ける。

「母御はいかがされた?」
「七年前にみまかりました」
「それは気の毒であったな、ご病気か」

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