『ブギウギ』めでたい話に流れる不穏な空気 スズ子、愛助、トミそれぞれの思惑が交錯する
夢のようなひとときを過ごした二人に、さらなるうれしい知らせが舞い込む。『ブギウギ』(NHK総合)第80話ではスズ子(趣里)の妊娠が発覚した。
箱根へ小旅行に出かけたスズ子と愛助(水上恒司)は湖畔で二人だけの時間を堪能した。病気や結婚に反対されていることも忘れ、童心に帰ってたわむれるスズ子と愛助。駆け出した愛助はスズ子に向かって「早く来ないと僕は消えてしまうよ」と笑顔で呼びかけた。愛助は将来子どもができた時のことを口にする。その展望は意外にも早く実現した。
「やっぱりやったで」
お腹をさするスズ子。愛助のいない東京で、スズ子の妊娠を聞いた山下(近藤芳正)と坂口(黒田有)はうろたえる。山下は産む気があるのかと尋ね、坂口も困り果てた。出産するとなれば、愛助との結婚の段取りや歌手の仕事の調整に加え、世間の目も気にしなくてはならない。
問題になりそうなのは愛助の母・トミ(小雪)の存在だ。トミは愛助との結婚を認める代わりに、スズ子に歌手をやめることを求めており、病気が再発したことでスズ子への不信感は高まっている。現段階でスズ子の妊娠を知らせることは得策ではないと、トミをよく知る二人は一致した。
山下と坂口の意に反して、事態は悪い方向に進んでいく。手紙でスズ子の妊娠を知った愛助は、そのことをトミに話してしまった。矢崎(三浦誠己)によるとトミは怒り狂っている。大切な息子をスズ子に取られ、結婚を許していない間に先に子どもができてしまったのだ。
こうなったら結婚を認めてもらうしかないと、スズ子はトミに直談判するため大阪へ行くと言い出す。しかし山下に制止され、代わりに山下が向かうことになった。表向き山下は身重のスズ子を気づかっているが、スズ子とトミがやり合うことで愛助との関係が修復不可能になることを怖れたのだろう。一触即発を避ける様子が事態の深刻さを物語っていた。
めでたい話なのに流れているのは不穏な空気だ。昨日まですぐそばにいた愛助がいない。結婚を反対されており、愛助の病状も気にかかる。スズ子からすれば不安でならないはずだが、その不安を胸にしまい、愛助を心配させないためにあえて自分は元気でお腹の赤ん坊がかわいくて仕方ないと手紙にしたためた。