『さよならマエストロ』『春になったら』 なぜ“父娘の関係”を描くドラマが増えた?

なぜ“父娘の関係”を描くドラマが増えた?

 2024年冬クール(1〜3月)のドラマが始まったが、今期は「父と娘」の関係を描いたドラマが多い。

 フジテレビ系で月曜22時に放送されている福田靖脚本のカンテレ制作ドラマ『春になったら』は、3カ月後に結婚を控えた椎名瞳(奈緒)と膵臓癌で余命3カヶ月の宣告を受けた父の雅彦(木梨憲武)の物語。24年ぶりのドラマ出演となるとんねるずの木梨憲武と奈緒の軽妙なやりとりが楽しい本作だが、父親の話を冗談だと思って真面目に取り合わなかった瞳が、次第に現実を受け止めていく過程の描き方が見事で、一気に引き込まれた。

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 母親が早くに他界し、いっしょにいる時間が長かったためか、本音を言い合う良好な関係を2人が作っていることが節々から理解でき、理想の父娘関係を描いているように感じた。

 一方、日曜劇場(TBS系日曜21時枠)で放送されている大島里美脚本の『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』は、天才マエストロ(指揮者)の父親・夏目俊平(西島秀俊)と、元天才ヴァイオリン奏者で、現在は市役所で働いている娘の響(芦田愛菜)の物語。

 俊平は5年前に起きたある事件をきっかけに家族の元を去り、指揮者を辞めて海外で暮らしていた。しかし、妻の志帆(石田ゆり子)に呼び戻され、志帆の地元の市民オーケストラで指揮者に復帰する。同時にこれまで疎遠だった家族と向き合うことになるのだが、優しく迎えてくれた弟の海(大西利空)と違い、響は心を開いてくれない。

『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』

 俊平と響の関係は父娘であると同時に、マエストロとヴァイオリン奏者という違いはあるが音楽家同士である。音楽家として父親の後に続けなかったという負い目のようなものが響の中にあるのかもしれない。

 また、この原稿を書いている時点ではまだ放送が始まっていないが、日曜22時30分から放送される玉田真也脚本の『厨房のありす』(日本テレビ系)は自閉スペクトラム症の料理人・八重森ありす(門脇麦)の物語だが、彼女を幼少期に引き取ったゲイであることを公言している大学教授・八重森心護(大森南朋)との、血の繋がらない父娘関係が描かれる。

 そして、金曜ドラマ(TBS系金曜22時枠)で放送される宮藤官九郎脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』は、1986年に中学で体育教師で野球部の顧問をしていた50代男性の小川市郎(阿部サダヲ)が2024年の現代にタイムスリップする物語。

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 昭和の男が現代で求適切な言動や行動を繰り返す姿を通して、昭和と令和のギャップを笑いを通して描くドラマとなりそうだが、市郎は非行に走る娘の純子(河合優実)との関係に悩んでいるようで、昭和の父娘関係を描いた物語としても注目である。

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