今祥枝の「2023年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 ネットワークスタイルへの回帰傾向

今祥枝の「2023年ベスト海外ドラマ」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2023年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、海外ドラマの場合は、2023年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第16回の選者は、映画・海外ドラマライターの今祥枝。(編集部)

1. 『一流シェフのファミリーレストラン』(ディズニープラス)
2. 『メディア王 ~華麗なる一族〜』S4(HBO/U-NEXT)
3. 『ザ・ディプロマット』(Netflix)
4. 『ムービング』(ディズニープラス)
5. 『アボット エレメンタリー』S2(ディズニープラス)
6. 『サムバディ・サムウェア』S2(HBO/U-NEXT)
7. 『赤の大地と失われた花』(Prime Video)
8. 『窓際のスパイ』S3(AppleTV+)
9. 『バリー』S4(HBO/U-NEXT)
10. 『アラスカ・デイリー』(ディズニープラス ※現在は配信なし)

 コロナがようやく落ち着いて、ハリウッドにも日常が戻ってくるかのように思えた2023年。しかし、全米脚本家組合と全米映画俳優組合の長期ストライキに揺れた一年であった。前段としてコロナ以前からの映像業界の地殻変動があり、2022年には急速に市場が拡大したストリーミングバブルがはじけ、長く続いたピークTV時代が一つの区切りを迎え、テック業界の過去20年間における「急成長期」が終わりを告げた。振り返れば、必然として大きな変化が起きた年だったと言えるだろう。

 一方、大手メディアやテック系のM&Aや提携は一旦落ち着いていたように見えたが、最後の最後にワーナー・ブラザース・ディスカバリーとパラマウント・グローバルが合併交渉の初期段階にあるというビッグニュースが飛び込んできた。OTTへの対抗策でもあるだろうが、仮に実現すれば約380億ドルもの企業価値を持つ巨大メディアの誕生となる。2024年も先が読めないなあという感じである。

『メディア王~華麗なる一族~ シーズン4』©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

 さて、そんなまさに過渡期にあるポストピークTV時代において、『メディア王 ~華麗なる一族』に代表されるピークTVの頂点とも言うべき秀作シリーズが続々完結(or 完結予定)。一方で『THE LAST OF US』のような新たなヒット作も生まれた。年明けに授賞式があるゴールデングローブ賞ほかのTV部門や、授賞式が延期されていたプライムタイム・エミー賞の候補作を見ると、まさに端境期にあることがわかりやすいかもしれない。この先もピークTV時代に到達したハイクオリティでインテリジェントな番組は、エミー賞などのアワードを席巻するだろう。一方で、ストライキ終了後の新たなルールによるポストピークTV時代のハリウッドは、巨費を投じた大作傾向に歯止めがかかり、全体の番組数は減る傾向にある。これはむしろ良い面があるとする分析もあって、ここでは詳しくは述べないが個人的にはそこに共感する部分もあるのだが、そんなポストピークTV時代に求められる作品とはどのようなものだろうか。

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