『ブギウギ』にはなぜ“困った人”が多い? 富田望生演じる小夜に同情させない脚本の意図
現在は舞台が大阪から東京に変わったが、義理と人情の精神を引き継いだスズ子が小夜のことを放っておけるわけがない。初対面の愛助を泥棒扱いするわ、それが誤解だと分かった後も疑いの目を向け、師匠であるスズ子の恋愛に首を突っ込むわ、傍迷惑な小夜。だけど、「オレ育ちが悪いからうたぐり深えんだ」「夢を語る男は信用できねえ」「いっつも騙された!」といった発言から、その言動の裏には苦労した過去が見え隠れする。そもそも小夜は親に捨てられ、12歳で奉公に出されているが、奉公先でもあまり良い思いをしなかったみたいだ。そういう辛い目に遭ってきたからこそ、憧れの人であり、恩人でもあるスズ子に同じ思いをしてほしくなくて、つい口を出してしまうのだろう。スズ子が六郎の戦死の報せを受け、思うように歌えなくなった時も小夜は誰よりその苦しみに寄り添ってくれた。
そんな小夜の過去が今後明らかになるのかもしれないし、アホのおっちゃんやゴンベエの例と同様に深くは言及されないかもしれない。もちろん、ちょっと困った彼らが「なぜ、そういうふうになったのか」を説明してくれた方が、観る側も“共感”できる可能性はあるし、すんなり受け入れやすい。だが、大事なのは“共感”よりも“想像”だ。ふとした言動から想像を膨らませ、足りないピースを補いながら心を寄せる。それが物語の楽しみ方であり、人生の楽しみ方なのではないかと、『ブギウギ』を観ながら思うのだった。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK