『ブギウギ』趣里×水上恒司だから成立する“痛いカップル” 足立紳が描く“純愛”の面白さ

『ブギウギ』足立紳が描く“純愛”の面白さ

 あまりに、ふたりが清潔過ぎて、ややこそばゆい。スズ子のモデル・笠置シヅ子の自伝などを読むと、当然、赤裸々には描いていないが、そこまで純粋な感じでもなく、極自然な恋愛欲求で進展していたように感じる。足立紳のこれまで描いてきた作品は男も女もノイズだらけなので、スズ子と愛助をこういうふうにきれいに思慮深く描くのが意外な感じもした。

 その分、はな湯の、アホのおっちゃん(岡部たかし)とアサ(楠見薫)が三つ巴の熾烈で見苦しい恋愛バトルのすえ、結ばれたというエピソードや、小夜が過去、男たちに痛い目に遭っていると語るところなどで、ノイズをまぶす。まわりに雑味があればあるほど、スズ子たちの純愛が際立っていく。

左から、坂口(黒田有)、福来スズ子(趣里)、小林小夜(富田望生)。 スズ子の楽団事務所にて。事務所を訪ねて来たとある男を見つめるスズ子たち。

 脚本家の足立紳に取材をしたとき、愛助を「かなりのぼんくらにしたかったのですが、主人公が惚れる人物なので、格好良くというか、こういうところが好きになっていったんだな、というようなことがわかる描き方はしています。基本的には、登場から少しダメな部分が目立つというタイプの人ではあります」と語っていた。そして、スズ子は、ダメな男性を支えるしっかり者として描かれるかと思いきや、「いや、支えるというか、どっちかというと、ヒロイン自身もあえて恋愛に慣れてない感じで描いてきたので。なんかこう、やや痛いカップルに見えてもいいんじゃないかな、と思って(笑)」だそうで。(※)

 確かに、愛助はややストーカーふうだし、スズ子が夢に見た、亀を持って迫ってくる姿は少し怖さもあった(第53話)。部屋は本とレコードで散らかりまくり、スズ子の評論を喜々として読みあげる様子なども、やばい。真面目で清潔感があって、スポーツマン的な水上がインドアキャラを演じるギャップが面白さになっている。

 ピュア過ぎる部分も、「痛いカップル」というふうに見れば、おもしろく見られそうだ。

参照

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b5ca113ad052d12f8523aa3ab79d0df58c3c7e81

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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