『SPY×FAMILY』『怪獣8号』『ダンダダン』 『少年ジャンプ+』作品のアニメ化なぜ増加?

『少年ジャンプ+』の相次ぐアニメ化を考察

 人気が人気を呼ぶ状況は、松本直也『怪獣8号』にも繋がった。中年にさしかかった男が、子供の頃からの夢をあきらめきれず、幼なじみが歩む道にも近づきたいと思って怪獣退治を専門に行う組織、日本防衛隊を目指す。そんな設定で中高年の心を刺激し、連載開始と同時に話題を独占した。怪獣と融合した主人公が驚異的な力を振るって、強大なはずの怪獣を倒していく展開にも圧倒された。

アニメ『怪獣8号』ティザーPV/2024年放送決定

 元殺し屋の妻子持ちが主人公の鈴木祐斗『SAKAMOTO DAYS』という前例があっても、中高年が好みそうな漫画は『週刊少年ジャンプ』には向いていなかったかもしれない。それなら『ヤングジャンプ』や『ジャンプSQ』といった大人が読む雑誌に連載されても良さそうだが、『怪獣8号』は『少年ジャンプ+』での連載を経て人気を集めていった。毎週の掲載でなくても、そしてページ数が少ない時があっても、無料で読めるなら支持し続けるファンがいる媒体の強みもあったのかもしれない。

 そしてアニメ化決定。『PSYCHO-PASS サイコパス』や『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』のProduction I.Gが制作を手がけ、特撮好きの庵野秀明監督が設立したスタジオカラーが怪獣デザインを担当する組み合わせだけでも、ハイクオリティなアニメになるといった確信が浮かぶ。2024年4月からという放送がスタートすれば、そこから原作に入って読み始め、他の漫画にも気づいて盛り上がる流れが今一度起こりそうだ。

 それは、龍幸伸の『ダンダダン』にも当てはまる。幽霊や妖怪や宇宙人といったオカルティックな存在が起こす怪異に巻き込まれながらも、少年少女たちが奮闘しては突破していく痛快ストーリーを圧倒的な画力で描いてすぐさま評判となった作品だ。これを映像化できるのは、『呪術廻戦』のMAPPAか、『鬼滅の刃』のufotableか、『プロメア』のトリガーくらいだろうと思われていた制作会社に、『DEVILMAN crybaby』『犬王』のサイエンスSARUが挙がって、どのような映像になるのかと期待を誘っている。

TVアニメ「ダンダダン」ティザーPV|2024年TVアニメ化決定

 こうなってくると、作品自体が実際に面白さを持っていることは確かな上で、ここに連載している漫画をアニメ化したら評判になると思われている可能性も浮かんでくる。橋本悠『2.5次元の誘惑』も、春原ロビンソン原作、ひらけい漫画の『姫様“拷問”の時間です』も、アンギャマン『ラーメン赤猫』も、アニメ化の発表時に『SPY×FAMILY』や『怪獣8号』などに並ぶ例として取り上げられた。媒体が持つバリューがメディアミックスを呼ぶのは『週刊少年ジャンプ』でも起こったこと。その現象が今、『少年ジャンプ+』で起こっていると見ることもできる。

 こうなると、『週刊少年ジャンプ』で起こっていた切磋琢磨が漫画アプリの方でも起こることになるだろう。「マンガ大賞2019」の受賞式で、作者の篠原は「週刊誌はパラパラと読んで絵が面白ければ目にとまります。面白いとあって読み始めますが、ウェブは自分から読みに行かない限り読まない」(※)と話して、作品を知ってもらう苦労を口にした。宣伝が必要とアカウントを取ってTwitter(現X)で自らPRもして成功へとたどり着いた。

 話題が話題を呼んで盛り上がる今だからこそ、漫然と待っているだけでは届かない。次の『SPY×FAMILY』であり『怪獣8号』であり『ダンダダン』になるために、送り手側の読み手に刺さるようなPR戦略が必要になっていると言えそうだ。

参照

※ https://jp.ign.com/manga-award-2019/34101/news/2019

■公開情報
『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』
12月22日(金)公開
原作・監修・キャラクター原案:遠藤達哉(集英社『少年ジャンプ+』連載)
出演:江口拓也、種﨑敦美、早見沙織、松田健一郎ほか
監督:片桐崇
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン:嶋田和晃
サブキャラクターデザイン:石田可奈
総作画監督:浅野恭司
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
音響監督:はたしょう二
アニメーションアドバイザー:古橋一浩
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
配給:東宝
製作:「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会
©2023「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会 ©遠藤達哉/集英社

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