『下剋上球児』“日本一の下剋上”が始まる 鈴木亮平がふたたび立ち上がる魂を体現

『下剋上球児』鈴木亮平がふたたび立ち上がる

 1年の中世古(柳谷参助)を除けば甲子園に行きたいと口にする部員はおらず、甲子園は夢のまた夢だった。越山高校は地元でも評判が悪く、長年初戦敗退だった生徒たちにはコンプレックスがあったためだ。先入観が諦めになって、自分の気持ちに蓋をしていた。でも本心は違う。目指せるものなら、自分でも手が届くなら、甲子園へ行きたい。楡が学校に行っていない時も素振りを続けていたように、夢の舞台への憧れを誰もが胸の奥で持ち続けていた。

 南雲にとって甲子園は自分が目指そうとして、あと一歩で果たせなかった場所だ。横田(生瀬勝久)とともに呼び出された南雲は、校長の丹羽(小泉孝太郎)と支援者の犬塚(小日向文世)に対面する。「もう一度、彼らと前を向いて生きていきたい」と頭を下げる南雲に、丹羽は南雲が復帰することの懸念を伝え、犬塚も手厳しく叱責を加えた。世間の目を考えれば、南雲を復帰させるのは非常識といえる。そこで横田が語った言葉が重かった。

「失敗した人間の背中、いつまでも蹴り続けて楽しいですか?」

 「あんたらはいっぺんも失敗したことないて言うんですか?」「失敗重ねて今があるんとちゃいますか?」と横田は訴える。たしかに南雲のしたことは許されないことである。しかし南雲は反省し、社会的な制裁も受けた。その上で前を向いて、自分のダメな部分も含めて生徒たちにさらけ出している。自らを反面教師にして生徒たちに教訓を伝え、たとえ失敗しても人生をやり直せることを教えようとしている。丹羽にとっては難しい決断である。けれども、丹羽は自身が責任を負うことも承知の上で、条件付きで南雲の復帰を認めた。結果を出すこと。「最低でもベスト8」に、南雲から返ってきた答えは「優勝を目指します」。その目に迷いはなかった。

 下剋上は単なるサクセスストーリーではない。一敗地にまみれた者が、もう一度立ち上がって高みを目指す。そこに個々の成長があるのはもちろんとして、互いの可能性を信じる絆とまっすぐな情熱が加わるとき、最高の人間ドラマが生まれる。南雲は自分を信じてくれる球児たちのために、彼らを甲子園へ連れて行くと誓った。南雲という1人の人間の再生は本作が伝える重要なメッセージであり、失敗した者の背中を蹴り、足を引っ張り合う世相への痛烈なカウンターになっていた。

 決意は偉大だ。甲子園という目標が定まった越山野球部は、その日から猛然と練習に励む。この瞬間からすべてが優勝に向けた足跡に変わった。一歩一歩の歩幅は小さくても、日々の積み重ねが夢への道になる。キャプテンの椿谷(伊藤あさひ)のもとで発足した新チームは春季大会でベスト16に進出。そして2018年の夏がやってくる。1回戦で多気高校に2年前のリベンジを果たし、2回戦は7回コールド勝ち。快進撃を続けてベスト8に到達した越山ナインは「日本一の下剋上」へと駆け上がる。

■放送情報
日曜劇場『下剋上球児』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、明日海りお、山下美月、きょん(コットン)、中沢元紀、兵頭功海、伊藤あさひ、小林虎之介、橘優輝、生田俊平、菅生新樹、財津優太郎、鈴木敦也、福松凜、奥野壮、絃瀬聡一、鳥谷敬、伊達さゆり、松平健、小泉孝太郎、小日向文世
原案:『下剋上球児』(カンゼン/菊地高弘著)
脚本:奥寺佐渡子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:佐藤美紀、黎景怡、広瀬泰斗
製作:TBSスパークル
©TBSスパークル/TBS(撮影:ENO)
©TBSスパークル/TBS(撮影:Len)
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
公式X(旧Twitter):@gekokujo_kyuji
公式Instagram:@gekokujo_kyuji
公式TikTok:@gekokujyo_tbs

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