『ブギウギ』小さな幸せを噛み締める「おおきにや」に涙 “ツヤそのもの”の朝ドラ受けも
ツヤからの贈り物を受けて、梅吉とスズ子はツヤの“コクピット”だったはな湯の番台で物思いにふける。ツヤとの出会いが梅吉にとっての一番の幸せ――であれば、ツヤのいないはな湯に自分がいるのは違うと、梅吉は考えを変える。そこには前に進むため、自分に言い聞かせていた部分もあったのかもしれない。
改めて、梅吉に東京で一緒に暮らすことを提案するスズ子。頭を下げる梅吉にスズ子は「当たり前におおきにはいらん」と声をかけるが、梅吉は「当たり前やから、おおきにや」とスズ子に返す。スズ子と梅吉が家族としていることは、血縁関係を考えれば決して当たり前ではない。戦地に向かった六郎に、若くして癌で亡くなっていったツヤ。生きていることすらも奇跡とすら思えてくる状況だ。そんな日々の日常の中で、見失ってしまいそうになる小さな幸せ、当たり前にもう一度目を向けた「当たり前やから、おおきにや」というセリフに思えた。
ラストシーンは、はな湯の常連に見送られながら大阪を後にするスズ子、梅吉と満面の笑みを浮かべる写真立ての中のツヤ。そこから次週の予告がインサートされるが、間抜けなBGMに乗せて「梅吉が捕まる」ということが丸わかりな内容に、大阪朝ドラの“ダメ親父”としての系譜がここで発揮されることがうかがえる。込み上がっていた感動が、ヒュルヒュルと引っ込んでしまうような予告であるが、そこを『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に出演の水川あさみが、「まいど! 今日は半額や!」と劇中の梅吉のセリフもしっかりと回収しながら、暗いムードを明るく笑い飛ばす朝ドラ受けは、ツヤそのものに思えてならなかった。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK