水川あさみは偉大なる“ブギの母”だ! 『ブギウギ』で示し続けた、頼れる母親像を振り返る
エンターテイナーとして、大きな帰路に立たされているヒロイン・スズ子(趣里)。放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)に、また新たな影が差している。
本作は基本的に明るいが、ひとりの人間の人生を描いている作品だ。実在の人物をモデルにしたあくまでもフィクションだとはいえ、楽しいことばかりではもちろんない。素敵な出会いがあれば、立ち直れないほどの別れだってあるはず。
病に伏せっていたスズ子の母・ツヤ(水川あさみ)が危篤となり、物語はいまひとつの山場を迎えるところである。
水川が演じるツヤは非常に快活な人物で、寝込んでしまうまでは本作の元気印だった。甲斐性無しではあるがどうにも憎めない夫の梅吉(柳葉敏郎)と対照的で、家業である銭湯「はな湯」を切り盛りしてきた存在だ。スズ子には義理と人情の大切さを教え、故郷・大阪を離れて東京で活躍する現在の彼女の生き方の指針になっている。つまり『ブギウギ』には、その登場の有無を問わず、絶えずツヤの存在があったわけだ。
たしかに、水川が表現するツヤの言動の一つひとつは鋭く強いもので、ほかの愉快な登場人物たちの中でも一際目立ち続けてきた。そもそもの作劇や演出、俳優同士の掛け合いがあってこそなのは当然だが、“頼れるお母ちゃん像”を見事に立ち上げた水川の功績は大きいだろう。