朝ドラ『ブギウギ』安井順平こそが「東京編」の真の立役者? 梅丸楽劇団での功績を検証

安井順平こそが「東京編」の真の立役者?

 本作の公式ガイドである『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)にて安井は、「辛島は、東京の梅丸楽劇団(UGD)の制作部長。戦争の影響でエンターテインメントが縮小に向かう中、スズ子ら楽劇団員と警察との板挟みになり、さらには羽鳥先生にも抵抗される、ザ・中間管理職(笑)。気苦労が絶えません!」と自身の演じるキャラクターのポジションについて述べている。そうだ、これから『ブギウギ』の世界は苦しく厳しい時代に突入する。そこでは辛島にどんな変化が起き、これを安井はどのように表現していくのだろうか。つねに場を取り仕切り、人々をうまく結びつけるポジションだからこそ、“安井順平=辛島一平”はさらにその力を問われることになるだろう。

安井順平、朝ドラ『ブギウギ』に感じた特別な“縁” 演じる辛島は「ザ・中間管理職」

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』に出演中の安井順平よりコメントが寄せられた。  安井が演じるのは、大阪の梅丸少女歌劇団(USK…

 同ガイドにてさらに安井は「下宿屋のチズさんいわく、学生時代の辛島は暗かったそう。なのにエンターテインメントの仕事に裏方として携わっているなんて、この世界への憧れや愛情が強いですよね。そんな彼がスズ子と羽鳥先生を引き合わせたのは、大きな功績。『これだけはオレの手柄だ!』と自負してます!」とも語っている。なるほど、やはり辛島こそが「UGD」の、ひいては「東京編」の真の立役者だといえそうである。

 そんな安井といえば、大人気劇団「イキウメ」の看板俳優だ(イキウメのファンからすれば、劇団員の誰もが看板俳優でもある)。この「イキウメ」の作品の特徴は、劇団の主宰であり作・演出を務める前川知大の“センス・オブ・ワンダー”をモチーフとした作劇や、ウィットに富んだセリフの数々とそれらの積み重ねによる演劇的飛躍。リズミカルに紡がれる言葉の応酬にのめり込んでいくうち、気がつけば観客は後戻りできないところにまで連れていかれている。それはたとえば宇宙であったり、黄泉の国だったりする。そしてこれを実現させるのが、前川の演出の特徴であるシームレスなシーン展開。とてつもないスピード感でいて滑らかにシーンが変わっていくため、これに適応できる俳優は限られているはずだと思う。

 このようなステージでの経験を重ねてきた安井だからこそ、辛島役としてあれだけのパフォーマンスを繰り広げられるのだろう。現在は、世田谷パブリックシアターが前川とタッグを組んだ大作『無駄な抵抗』が同劇場にて上演中。もちろんここに安井も立っている。映画『燃えよ剣』(2021年)での山南敬助役や、『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)の平川勉役などの映像作品で広く知られるようになっている存在だが、やはりその真価に触れるのであれば演劇作品だ。おそらく誰もが、いかに朝ドラの場で彼のパフォーマンスに触れられるのが贅沢なことなのか実感するだろう。「東京編」のいまのところのMVPは、安井順平だと筆者は思う。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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