『ブギウギ』秋山美月は伊原六花にしか演じられない! 人生と重なる歩みと舞台への執念

秋山美月は伊原六花にしか演じられない!

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の第7週となる「義理と恋とワテ」が放送された。今週は、スズ子(趣里)と共に上京してきた秋山(伊原六花)が大阪に帰ることになる。スズ子と東京で切磋琢磨してきた秋山。恋をし、悩み、そして志(こころざし)を胸に一歩踏み出そうとする秋山の活躍を振り返っていきたい。

 実力派で自分にも仲間にも厳しかった秋山が東京編で見せた新たな一面。その魅力に釘付けとなった視聴者も多かったのではないだろうか。中でも、中山(小栗基裕)との恋は秋山という人物を描くにおいて非常に重要な役割を持っていたように感じる。秋山は中山の実力を認めダンサーとして尊敬していたし、そこに少なからず愛はあったはず。それにもかかわらず、恋人としての2人はうまく噛み合わなかった。それは男役から娘役に転向させようとする中山のエゴイスティックな一面に視聴者がモラハラっぽさを感じたように、秋山自身も自分らしく生きることを否定されたと感じたからだろう。

 ここで触れておきたいのは、秋山を演じる伊原六花の男役と娘役でのダンスシーンの差だ。秋山が自身の表現ではない娘役を演じる場面では、衣装や表情こそ娘らしいものの、指先や体の固さなどダンスで表現される世界観に男役らしさが抜けきらない。そのダンスから発せられる違和感と、秋山の心に浮かび上がる「自分らしさを削いだこと」の違和感が見事に一致しているかのように感じられた。普通は気持ちがついてきても、身体は思うようには動かないものだ。それをここまでにしたのは、やはり伊原の身体表現の力があってこそのものだろう。これまでダンスに心血を注いできた伊原だからこその細部まで行き届いたダンスシーンに心を突き動かされた。

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 伊原といえば、やはり登美丘高校時代に「バブリーダンス」で一世を風靡したときの印象が強い。彼女は当時から“世界観”を持ったダンスを踊ることには長けていた。そんな中で、『ブギウギ』での秋山役はまさに伊原にぴったりの役柄だった。“ステージの上でどうありたいかをストイックに追求し、最後は自分を貫くために東京を去ることを決断する”という今週の秋山の姿は、これまで何度かテレビでも取り上げられてきた伊原の人生とも重なるものがあるのではないか。彼女がダンス部のキャプテンとして向き合ってきた舞台への執念には、秋山の生き方と通ずるものがあると感じた。

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