『いちばんすきな花』自分の“エゴ”とどう折り合いを付けるか? 少しずつ芽生えた4人の想い

『すき花』自分のエゴとの折り合いの付け方

 ゴミ袋の袋、ゴミ袋にするか問題。こうした生活の中で見つかる小さな価値観の違いについて、真剣に話し合える関係性のなんて微笑ましいことか。「ゴミ袋が入っていた袋はゴミ」「じゃあ、ゴミに本物のゴミ袋が入っていたってこと?」なんてうっかり哲学的な問いにぶつかったり、「新しいゴミ袋を買っておいてくださいね」とルールを再確認したり……。

 そんな椿(松下洸平)、ゆくえ(多部未華子)、夜々(今田美桜)、紅葉(神尾楓珠)の会話を聞きながら、ふと少し前の椿だったら、いや今でもこの4人で集まっているとき以外の彼だったら、何も言わずに新しいゴミ袋をセッティングしていたのではないだろうかと思う。会社で当たり前のようにコピー機のインクを補充していた彼のことだ。

 いつだって誰かの気持ちばかりを考慮して、優先順位に自分の気持ちをエントリーし忘れてきた椿。そんな彼が、我が家のルールとしてゴミ袋についての自分の考えをきっぱり主張することができたのは、4人がそれぞれの気持ちに素直であることがわかること、そして“部室“とも言えるこの家の家主という環境のおかげだろうか。

 木曜劇場『いちばんすきな花』(フジテレビ系)第6話は、エゴについて考えさせられる回だった。4人で過ごす時間が増えていくにつれて、少しずつ芽生えたそれぞれの想い。紅葉はゆくえに、そして夜々は椿に、淡い恋心を抱くようになっていた。そして、紅葉と夜々がそれぞれの気持ちに気づいたように、ゆくえもまた2人の恋に気づく。

 しかし、紅葉はゆくえに告白をするつもりもない。「好きだと好きって言わなきゃいけないの? わざわざ言うってこっちのエゴじゃん」と。ゆくえも、そんな紅葉の気持ちを察して、突き放すことも、思わせぶりな態度も取らないと冷静だ。2人(恋人)になるよりも、今は4人のままで。その意見で一致しているゆくえと紅葉は、ある意味でお似合いだ。

 一方で、ゆくえも紅葉も夜々には同じような形で椿とつながり続けることを押し付けるつもりはないと話す。この4人でいることの友情と、夜々の椿への恋愛感情。そのどちらについても、優劣をつけることなく尊重していこうという2人の強い意思を感じられるようだった。

 「男同士、女同士の恋愛は成立するか?」の問いには、たとえ自分はそれに当てはまらなくても「はい。そういう人もいると思います」と答えられるのに、「男女の友情は成立するか?」と問われると、とたんに「私はあり」「僕は無理だな」なんて自己主張してしまう人が多い。恋愛には慎重なのに、友情は扱いが軽くなりがちになることへの違和感。ゆくえの話は、なかなか考えさせられるものがあった。

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