『セクシー田中さん』生見愛瑠の“自立”するカッコよさ 田中さんと笙野は“稀有”な関係に
田中さん(木南晴夏)の身に“消化不良”の出来事が降りかかり続ける『セクシー田中さん』(日本テレビ系)第4話。
笙野(毎熊克哉)との未遂事件ではあれこれ思い巡らせ心配したのも杞憂で、「僕はあなたに1ミリも下心を抱いていない」と言い切られてしまう。安堵するとともに心に隙間風が吹くのを感じる田中さん。
三好(安田顕)からの決して自分だけに向けられたものではない、なんてことない“綺麗”という言葉に舞い上がり、特別な感情を抱いてしまった不毛な恋愛真っ只中の自分の今と重なり、虚無感が込み上げる。誰にとっても“特別”にはなれない自分を突きつけられているように感じたのかもしれないし、どこかで欲張ってしまう自分に気がつき、心の置き場所がわからなくなってしまったのだろう。
さて厄介なのが、拗らせ男子でただでさえややこしい笙野が、田中さんから好意を寄せられていると勘違いし、暴走し始めたこと。確かに田中さんから「“かわいいね”って頭を撫でられたい。好きな人にだけは」と涙ながらにあんなに真剣に切実に真っ直ぐな想いを打ち明けられてしまえば、面食らい意識してしまうのもわかる。田中さんが三好を想ってこぼした本音が、まさかの笙野に刺さってしまい、今度は勝手に田中さんからの片想いに応えられないと悩み始める彼の姿がおかしい。
しかし、笙野も残念な存在なだけではなくファインプレーも見せる。四十肩に見舞われベリーダンスをしばらくお休みせざるを得なくなった田中さんを心配し、自身の過去の経験からブロック注射を紹介したり、手料理を持参したり掃除を手伝ったりと甲斐甲斐しく彼女をサポートする。小西(前田公輝)が見抜いていた通り、笙野の好きなタイプに田中さんはまさに合致しているように思えるし、思い込みの激しい笙野からすれば、田中さんは“対話ができる”極めて稀有な存在だ。
面白いのは、どんどん笙野の方が田中さんに夢中になってしまっていることだ。“びっくりするくらい無神経だけど親切”な笙野は、田中さんがどうやら自分のことを男友達だと思っているらしいことに気がつき大混乱。さらには田中さんの片想いの相手が既婚者で軟派な三好だと判明するなり、「田中さんには相応しくないですよ!」とまくし立てる姿は、ベリーダンスをする田中さんに「もったいないです!」という言葉を放った、かつての笙野を彷彿とさせる。とにかく自身の理解を超えたことに出会った際の笙野の拒絶反応は“正しさ”を優先し、それを振りかざそうとする。それがいかに自分本位で、相手を傷つけ断罪することになるとは、つゆとも思わない笙野はやっぱり惜しい。
「あなたに踏みつけられたくない」と田中さんに他の男性のことで面と向かって怒られてしまった笙野の中で、どんな感情が湧いてきたのだろうか。
あんなに他人に対してはっきりとNOを突きつける田中さんを初めて見たが、これまでは男性からモノのように扱われてきたから感情が動かされることはなかったが、笙野は「人として扱ってくれるから、自分でもびっくりするくらい腹が立つし傷ついた」のだと言う。やはりなんだかんだ田中さんと笙野は良いコンビで、互いに他人に心を明け渡すのが苦手なタイプながら、相当深いところに入り込みあっている。