『ゼイチョー』葵揚は実直で人間味溢れる役がよく似合う 菊池風磨と本郷奏多の直接対決も
「悪いの私たちですか?」
滞納者が抱える事情や社会情勢を取り扱う『ゼイチョー〜「払えない」にはワケがある〜』(日本テレビ系)が第5話で斬り込んだのは、外国人労働者の問題だ。特定技能ビザで来日し、「いくしま農園」で働いているベトナム人労働者のグエン(葵揚)の身に突然予期せぬ事態が降りかかる。給与から天引きされているはずの住民税が実際には納税されておらず、急に徴税されてしまうことになる。介護施設で働くベトナム人女性・チュン(ジョージアナ)も同じ惨事に見舞われ、在留資格の延長のために必要な納税証明書が用意できず途方に暮れる。
まずは後者のケースについて、徴税吏員・饗庭(菊池風磨)や百目鬼(山田杏奈)は派遣会社の社長が外国人労働者たちを欺き、給与から住民税を天引きしていると説明しておきながら、実際にはその分を着服し私腹を肥やしていたことを突き止める。決して多くはない手取りから母国にいる家族に仕送りをし、常に生活を切り詰めている外国人労働者から搾取しようなんて、饗庭が言う通り、本当に“人の心”があるのかと思わずにはいられない。3年ほどで帰国してしまう短期労働者が中心で、帰国すると徴税しきれないという点を突いた悪質な行為だ。
「日本人はね、自分たちがやりたがらないことを全部外から来た人間に押し付けてるんです。それだって立派な搾取でしょ? 私たちの生活には彼らの犠牲が必要不可欠なんですよ」
外国人労働者をその労働力を必要としている職場とマッチングし、派遣することで対価を得るビジネスをしている人間にあるまじき発言だ。そんな派遣会社社長に「必要ありませんよ、犠牲なんて」と間髪入れずに言い放った饗庭は、税金の基本にある相互扶助の精神について説く。本当にその精神通りにくまなく税金が活用されていることを願うばかりではあるものの、自分は外国人労働者を不当に搾取し滞納している張本人のくせに、“あなたは彼らを搾取していないとでも言えるのか?”と居直る社長に対して、痛烈なパンチを咄嗟に食らわせる饗庭はお見事ではあった。
さて、前者のケースでは意外な“払えないワケ”が隠されていた。夫の死後、一人で農園を切り盛りし立ち行かなくなっている代表・生嶋妙子(大島さと子)のことを助けたい一心で、グエン本人が住民税分を自ら願い出て生嶋に渡していたのだった。その方法は誤ってはいたものの、互いに苦労している者同士、言葉の壁があったって育め合える「相互扶助の精神」を思うと、前述の派遣会社社長の姑息さがますます際立つ。