『フェルマーの料理』岳と海の“相棒”に近い関係性 板垣李光人が複雑な心情を際立たせる
“数学から逃げた”と岳を非難する神楽の冷ややかな視線にも、「数学から逃げたのは僕自身のせい。今の僕には料理しかないんだ。だから、きっと満足させるよ」といつも通り真っ直ぐな言葉を返す岳。
毎話観ていて思うのは、岳の純粋さゆえに心の奥にダイレクトに届く言葉選びの心地よさだ。相乗効果のアイデアを借用したものの、牡蠣のコハク酸をプラスして失敗した岳を見て「料理は数学と違って、なんでも計算通りってわけにはいかないんだよな」と孫六が呟く場面があるが、こと会話においては“計算”されていない岳のありのままの言葉が、多くの人を救ってきたのではないか。
海にプレッシャーを与えられた岳が閃いたのは、高級食材「甘鯛」を使ったお茶漬け。楽しそうに数式で導いたレシピを実践していく岳を見て、その味に感動した神楽は「とても美味しい料理でした。北田くんは逃げたわけじゃなかった」と数学を純粋に楽しんでいた頃の幼き日の岳と自分を思い出したのだった。そしてこのお茶漬けを通して、“2人だから見えた世界”を孫六も感じていた。
「どうして素人みたいなお前が考えたレシピが……こんなに……」
京都の有名料亭の息子として生まれ、かつては「神の子」とも呼ばれていた彼でも「そんな人間でも海様の元では下っ端なんですね」という寧々(宮澤エマ)の言葉通り、レストラン「K」ではまだ大きなチャンスを掴めていない。それにもかかわらず、料理の素人の岳が、次々と天才的なレシピで成功していく姿に嫉妬した孫六。そんな岳に対しての、複雑な心情を際立たせるのが板垣李光人の演技だ。泣きそうな顔で悔しさを滲ませる板垣の表情から、改めて孫六が感じている料理の道でプロとして成功する険しさを感じざるを得なかった。
しかし、そんな孫六のことも岳は決して見捨てない。先輩である孫六の力を借りて、蓋を開けた瞬間の“香り”で勝負する、フレンチと和食を融合させたお茶漬けを「2人の料理」として完成させた。「よろしくな、岳」とはにかみながら岳の名前を呼ぶ孫六の声からは、とげとげしさが消えていた。
今回は、海ではなくライバルと共にさらなる成長を遂げた岳。しかし、海が夜な夜な行っている密会の行方や2024年の蘭菜の「北田岳からこの店を取り戻すしかない」という発言など、物語はまだまだ謎を残したまま。仄暗さが漂い始めたレストラン「K」の新人料理人・北田岳を待ち受ける運命とは。
■放送・配信情報
金曜ドラマ『フェルマーの料理』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXTにて、各話の初回放送直後配信
Netflixにて配信中
出演:高橋文哉、志尊淳、小芝風花、板垣李光人、白石聖、細田善彦、久保田紗友、及川光博、宮澤エマ、細田佳央太、宇梶剛士、高橋光臣、仲村トオル
原作:小林有吾『フェルマーの料理』(講談社『月刊少年マガジン』連載)
脚本:渡辺雄介、三浦希紗
プロデューサー:中西真央
演出:石井康晴、平野俊一、大内舞子
©TBS
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