朝ドラ『あんぱん』は『ゲゲゲの女房』に近い構成に? 期待したい“ベテラン”のヒロイン

『あんぱん』は『ゲゲゲの女房』に近い構成?

 朝ドラことNHK連続テレビ小説第112作目『あんぱん』の制作が10月20日に発表された。

 2025年度前期に放送される本作は、国民的作品『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと小松暢の夫婦をモデルとした物語。タイトルの『あんぱん』も『アンパンマン』につながるものと考えて間違いないだろう。

 実在の夫婦をモデルにその半生を描いた朝ドラといえば、牧野富太郎をモデルとした2023年度前期の『らんまん』、古関裕而をモデルとした2020年度前期の『エール』など、近年も多く作られてきた。

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、「実在の夫婦をモデルとした朝ドラの中でも『あんぱん』に最も作品のイメージが近くなりそうなのは、2010年度放送の『ゲゲゲの女房』ではないか」と語る。

「『ゲゲゲの女房』は、『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られる水木しげるさんの妻・武良布枝さんの自伝エッセイを原案とした作品です。水木さん、やなせさんが漫画家であること、水木さんは1922年生まれ、やなせさんは1919年生まれということで、戦前・戦中・戦後をしっかりと描いていける点などからも、『あんぱん』と『ゲゲゲの女房』の共通点は多くなりそうです。放送当時、ちょうどSNSが普及し始めたタイミングだったこともあり、視聴者が水木さんのイラストなども使いながら盛り上がっていたのを覚えています。『ゲゲゲの女房』が新しかったのは、あくまで主人公は“女房”の布美枝(松下奈緒)であり、水木さんをモデルとした茂(向井理)の物語にしなかったところにあります。それによって、偉人の成功体験を描いていくのではなく、彼に携わったさまざま人物が妻の視点から描かれていく点に面白さがありました。『ゲゲゲの女房』はどちらかというとサブカルチャー的な視点に寄ったところがありましたが、やなせさんの活動を踏まえていくと『あんぱん』はもう少し王道な、それこそ戦後の芸能史になるような物語になる可能性もあるような気がしています。また、『らんまん』でも感じたのですが、知らない方の人生を知ることができるのは面白いんですよね。牧野富太郎さんを教科書などでは学んでも、妻・寿衛子さんのことを知る機会はほとんどありません。フィクションではありますが、彼の成功も寿衛子さんの存在があったからこそなんだと『らんまん』を通して理解できたのはよかったですね。『あんぱん』も、やなせさんの妻・小松さんがどんな半生を過ごして、どう影響を与えていたのかが描かれそうです」

 そして、本作の脚本を担当するのは中園ミホ。朝ドラ『花子とアン』、NHK大河ドラマ『西郷どん』、『やまとなでしこ』(フジテレビ系)、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)など、話題のドラマを手がけてきたヒットメーカーだ。成馬氏はその作家性を次のように語る。

「中園さんが手がける作品の多くが、“強い”女性が主人公のイメージがあります。『西郷どん』を手がけていますが、“男性の成功”を描いているイメージがあまりなく、恋愛描写が多いイメージもない。『あんぱん』は『らんまん』や『エール』のように男性主人公となる可能性もあるとは思いますが、中園さんの作家性を考えると、やなせさんの妻・小松暢さんをモデルとしたキャラクターが“主人公”となる気がしています。また、中園さんといえば、その取材力が有名です。『ドクターX 』や『ハケンの品格』(日本テレビ系)では徹底したリアリズムを描いたからこその面白さがありました。中園さんはやなせさんと文通をしていたそうですが、今回も執筆するにあたり、やなせさん、小松さんの軌跡を徹底的に取材されているのではないでしょうか。どう脚色していくのか楽しみですね」

 本作はヒロインをオーディションで選ぶことも発表されている。現在放送中の『ブギウギ』の趣里、次回作『虎に翼』の伊藤沙莉、次々回作『おむすび』の橋本環奈と、近年のヒロインは、すでに多くの主演作を務めている確かな実力者が抜擢されている。果たして『あんぱん』はどんなキャストが選ばれるのだろうか。成馬氏は意外な人物の名を候補に挙げた。

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