2025年前期朝ドラは小松暢とやなせたかしをモデルにした『あんぱん』に 脚本は中園ミホ

朝ドラ『あんぱん』2025年放送決定

 2025年度前期放送のNHK連続テレビ小説のタイトルが『あんぱん』に決定。脚本を中園ミホが担当することが発表された。

 朝ドラ第112作目となる本作は、『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと小松暢の夫婦をモデルとした勇気の物語。

 あらゆる職業を転々としながら定まらない人生を送っていた、遅咲きの漫画家・やなせたかしが70歳にして生きる喜びを書いたアンパンマンのマーチの歌詞を生み出した背景には、戦前・戦中・戦後と激動の時代を、ちょっと気が弱くて自信のないたかしと共に生き、けん引し続けた「ハチキンおのぶ」の存在があった。

 生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった二人の人生。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く。

 実在の人物である2人をモデルとするが、 登場人物名や団体名などは一部改称して、フィクションとして描かれる。なお、ヒロイン・のぶ役を演じるキャストはオーディションで選ばれる。

 脚本は、NHK連続テレビ小説『花子とアン』、NHK大河ドラマ『西郷どん』などを手がけた中園が担当する。中園は、やなせたかしと小学生の頃に文通をしていたそうで、「やなせさんはいつもやさしい笑顔を浮かべ、『元気ですか? お腹はすいていませんか?』と声をかけてくれました」と驚きのエピソードを明かした。本作を手がけることについては、「戦後80年、放送開始から100年目にあたる2025年、連続テレビ小説で、のぶと嵩のお話を書かせていただけることに、今、私は幼い頃のように胸を高鳴らせています。ドキンドキンと――」とコメントを寄せた。

コメント

中園ミホ(脚本)

「ハチキンおのぶ」「韋駄天おのぶ」こと、小松暢さんをモデルにした朝田のぶがこのドラマのヒロインです。
ハチキンとは、土佐弁で男勝りの女性のこと。県大会で優勝するほど脚が速く、行動力とスピード感にあふれ、人生の荒波をパワフルに乗り越えていくヒロインです。
彼女は、あの『アンパンマン』に登場する『ドキンちゃん』のモデルと言われています。いつも好奇心に目を輝かせ、「お腹がすいた~!」というのが口癖のチャーミングな妖精です。
そして、暢さんが生涯のパートナーとして選んだ男性は、漫画家で詩人の柳瀬嵩(やなせたかし)さん。彼ははっきり言って遅咲きの人です。日本中の子どもたちの間でアンパンマンが大人気となり、漫画家として世間に認められたのは、なんと70歳になってからでした。
幼い時に父を病気で亡くしたやなせさんは、高知県の後免町にある伯父の家に引き取られ、やがて戦争が始まり、出兵します。
終戦後の混乱期、二人は高知新聞社の編集部で記者として働いていましたが、暢さんは「私、先に東京へ行ってるから」と言い残し、さっさと新聞社を辞めていなくなります。彼女を追いかけるようにやなせさんも上京し、漫画家となるきっかけをつかむのです。
こうして、暢さんは持ち前の行動力と飽くなき好奇心で、様々な職場を渡り歩き、手塚治虫、赤塚不二夫、いずみたく、向田邦子、青島幸男……等々、才能豊かで個性的な人たちと出逢い、関わり合いながら、ちょっと気が弱くて自信のないやなせさんを励まし続けます。
やなせさんの才能がいつか必ず開花することを信じていたパートナーの存在がなかったら、アンパンマンがこの世に誕生することもなかったかもしれません。

「正義は逆転することがある。信じがたいことだが。
じゃあ、逆転しない正義とは何か?
飢えて死にそうな人がいれば、一切れのパンをあげることだ」

これはアンパンマンの神髄であり、二人が逆境や失敗をいくつも乗り越えて、つかんだ人生のテーマです。

二人が最も輝いていたはずの青春期、戦争が始まりました。やなせさんはたった一人の弟(千尋さん)を戦争で亡くしました。戦場にも日本中にも飢えて死にそうな人があふれていました。
だからこそ、晩年になってアンパンマンを書かずにいられなかったのだと思います。お腹をすかせて弱っている人に自分の頭をかじらせて元気にするヒーローです。
初めは「自分の頭を食べさせるなんてグロテスク」とか「太っていてカッコわるい」と、まるで人気がなかったアンパンマンですが、たった一人、暢さんだけは応援し続けたのです。

最後に、とても個人的な打ち明け話をします。
アンパンマンが誕生するずっと前、小学生の私は、やなせさんと文通をしていました。『愛する歌』という詩集に感動して手紙を送ったところ、すぐにお返事をくださったのです。何度かお目にかかったこともあります。やなせさんはいつもやさしい笑顔を浮かべ、「元気ですか? お腹はすいていませんか?」と声をかけてくれました。
戦後80年、放送開始から100年目にあたる2025年、連続テレビ小説で、のぶと嵩のお話を書かせていただけることに、今、私は幼い頃のように胸を高鳴らせています。ドキンドキンと――

倉崎憲(制作統括)

ここ数年ほどアンパンマンのテーマ曲を無意識に口ずさむ頻度が増えました。
「なにが君のしあわせ なにをしてよろこぶ わからないままおわる そんなのはいやだ!」
人生百年時代と言われ、大人になればなるほど生き方に悩み、この歌詞が身に染みるのです。人生って一回きりなんだなー、と。この歌詞を生み出したやなせたかしさんをぐいぐいと抜群の行動力で引っ張ってきたのが、小松暢さんです。上京する時、結婚する時、漫画家として独立する時、いつも暢さんのアクションがありました。暢さんがいなかったらもしかしたらアンパンマンも生まれていなかったかもしれないと、二人の物語を描きたいと思いました。中園さんにやなせさんの書籍を差し出したところ、「私、やなせさんと小学生のころ文通していました」という驚きの発言が。これは運命だと感じ、そこからあっという間に今に至ります。二人が生きた激動の半生を通じて、生きる喜びが身体中から湧いてくるような、生きていて良かったなと感じていただけるような朝ドラをお届けできたらと思います。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
2025年春~放送予定
作:中園ミホ
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:川口俊介
制作スケジュール:2024年秋クランクイン予定
写真提供=NHK

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