『ハケンの品格』は“2020年のリアル”を描いているのか 実際の派遣社員に聞いてみた

『ハケンの品格』実際の派遣社員の声は?

 4月から「同一労働同一賃金」が導入され、正規雇用社員と非正規雇用社員の待遇格差が見直されるきっかけとなっている。奇しくも時を同じくして、この6月から放送が始まった『ハケンの品格』(日本テレビ系)。13年前のヒット作の続編で、脚本家・中園ミホが描く伝説のスーパー派遣・大前春子(篠原涼子)が令和の世に帰ってきた。本作は中園が初めて自分からテレビ局に企画を持ち込んだ作品だといい、企画にあたり実際の派遣社員に取材を重ね、彼女らとはいまだに月に1度飲み会をする関係だそうだ。

 前作が放送された2007年は日本も好況に湧いており、派遣社員は増加の一途を辿っていたが、2008年のリーマンショックの影響を直に受けて「派遣切り」が横行。「年越し派遣村」が作られたりもした。

 未曾有のウイルス感染に見舞われている現在、派遣社員を取り巻く実態はどうなっているのか、リアルな声を聞いてみた。

 大前春子同様に営業系部署の事務職で派遣社員として働く30代女性によると、「大手企業の派遣ということもあってか、以前正社員として働いていた中小企業よりも余程待遇も良く、特段不満はありません。派遣の意見も取り入れてくれる会社なので、ドラマ内で描かれていたように派遣社員が正社員に対して業務面で『出過ぎた真似かな』と遠慮したりすることはあまりありません。福利厚生でグループの親睦を深める飲み会などへの補助金が会社から支給されますが、その人数にもカウントされています。年に1度、会社への貢献度が高かった派遣スタッフの表彰もあります」とした上で、最近の悩みを教えてくれた。「ただ、ここ最近コロナの影響を受けて業績が一気に落ち込んでいるのを見ると、この状況が続けば一番最初にしわ寄せを受けるのは自分たち派遣社員だろうなとは思っています」と本音を漏らす。

 ちなみに、ドラマ内では大型受注を祝う営業部の輪から少し離れたところに若手派遣社員の福岡さん(吉谷彩子)や千葉さん(山本舞香)がいて、控え目に拍手を送っていたシーンがあったが、むしろ派遣社員が表彰のトロフィーを手配したり、部会での表彰スライドの作成を任されたりしているようで、それは双方にとって変に遠慮をさせない上手い役割分担として作用し、一体感を高めることに成功しているようだ。

 また、福利厚生という点ではS&F社では社員食堂の割引が社員のみの適用になっており、「社員向けの福利厚生」「派遣は部外者」だと上層部がはっきり明言していたが、彼女の派遣先ではそんなことは決してないと言う。

 「うちの会社は元々リモートワーク(在宅勤務)が推進されていたのですが、このコロナ禍においては完全リモートワークに。緊急事態宣言が解除されてからも営業職の正社員はほぼ全員在宅勤務ですが、そんな中でもFAXや郵送物のチェックなどのために我々事務側はローテーションを組んで出社をしています」。これは、派遣社員というよりは事務職という職種によるところも大きいようだが、少し思うところはあるようだ。

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