『ONE PIECE』原作者・尾田栄一郎監修の安心感 その起点となった『STRONG WORLD』

『ONE PIECE』原作者監修の安心感

 10月20日から『ONE PIECE FILM RED』が劇場で再上映されるのに合わせ、フジテレビ系列の『土曜プレミアム』で10月14日に『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』、10月21日に『ONE PIECE FILM Z』がテレビ放送される。『STRONG WORLD』は『ONE PIECE』原作者の尾田栄一郎が劇場版として初めて製作総指揮を務めた作品で、『FILM Z』は総合プロデューサーとして関わった作品。尾田が総合プロデューサーとして深く関わったことが、『FILM RED』の興行収入200億円に迫る大ヒットの要因だったように、『STRONG WORLD』や『FILM Z』も原作者全面参加の意味を感じ取れる強さと深さを持った作品だ。

 2009年12月12日に公開された『ONE PIECE』映画の第10作となる『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』は、48億円という興行収入を叩き出し、第2作『ONE PIECE ねじまき島の冒険』が持っていた30億円のシリーズ最高記録を塗り替えた。直前の2作が10億円を割って、人気も下火になったのかと思われ始めていたところの大躍進。そこには、原作者が製作総指揮として作品に入り込んで作り上げた、原作との地続き感を持った強さと面白さがあった。

 大海賊時代の幕開けを告げて処刑されたゴールド・ロジャーと同じ時代に大暴れしていた海賊・金獅子のシキは、ルフィの祖父で海軍中将のモンキー・D・ガープと戦って敗れ、大監獄インペルダウンに投獄される。何でも浮かせる「フワフワの実」の能力を封じる海楼石の鎖につながれた両足をシキは自ら切り落とし、インペルダウン初の脱獄者となって行方をくらませる。

 それから20年。シキは空を行く巨大な船と自身の海賊団を従えて現れ、ルフィやナミ、ゾロの故郷のイーストブルーを襲撃し始める。そんな奴だとは知らず、シキの船と遭遇したルフィたち麦わらの一味は、航海士のナミが誰よりも早く天候の異変を察知してシキに注意を促す。この才能を気に入ったシキは、本性を現してナミをさらい、ルフィたちが乗るサウザンドサニー号を空に浮かんだ巨大な島に叩き落とす。

 そして始まる麦わらの一味とシキとの戦いは、巨大化し凶暴化した生物たちとの壮絶なバトルから始まり、逃げ出してきたナミを取り戻そうとやって来たシキにまたしても敗北したルフィたちが、再びさらわれたナミを助けようとしてシキに挑んでいく最終決戦へと向かって進んで行く。ルフィの仲間を第一に思う強い気持ちがうかがえる展開に、壮絶なバトル描写も加わって喜びと興奮をもたらしてくれる。そんな映画だ。

 ストーリー的にはナミの才能の凄さが示され、ルフィを信じる気持ちの強さもうかがえて、キャラクターへの理解をグッと深めてくれる。演出の素晴らしさとも相まって、元からのファンも改めてナミのことが好きになってしまう。

 そうしたキャラクターの描写も、原作者の尾田が製作総指揮をとったからこそ、TVアニメが始まって20年が経ち、作品とともに成長してきた『ONE PIECE』のファンを納得させるものになったのかもしれない。金獅子のシキという強敵の存在も、『ONE PIECE』の世界設定の中に巧みに織り込まれていた。たとえ原作漫画やテレビアニメの本編で触れられなくても、シキの存在はロジャーが健在だった時代の海賊たちと海軍との壮絶な戦いを想像させ、ルフィが四皇に迫る強さを見せるほどに成長できた理由のひとつとして息づいている。

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