草彅剛は“フィクションの説得力”を盤石にする 11年ぶり『世にも奇妙な物語』出演は期待大!
オムニバスドラマ『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の最新作となる『世にも奇妙な物語’23 秋の特別編』が11月11日に放送されることが決定した。
大きな注目が集まっているのが、『永遠のふたり』で草彅剛が11年ぶりに『世にも奇妙な物語』で主演を務めること。教授殺害の疑いをかけられた助手の坂本(草彅剛)が研究所に立て籠ったことから起こる騒動を描いた作品になるとのことだが、草彅が出演するというだけで期待大である。
今作で『世にも奇妙な物語』の出演は5作目となる草彅だが、もっとも強烈な作品は『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』で出演した『13番目の客』だろう。
本作は、青年実業家の本田(草彅剛)が、偶然入った13人の理髪師がいる理髪店で巻き込まれた騒動を描いた物語だ。
理髪店には独自のルールがあり、髪を切られた客は理髪師にされてしまい、自分が髪を切る順番が回ってくるまで、店の中に閉じ込められてしまう。
まるで刑務所とカルト教団を合体させたような理不尽なシステムなのだが、理髪店に閉じ込められた本田が、次第に環境に順応してしまうところに奇妙な味わいがある。傲慢な実業家だった本田が優しい笑顔を見せる好青年に変わっていく姿を草彅は好演しており、「人生とは何か」を考えさせられるドラマに仕上がっていた。
普通の人が理不尽なシチュエーションに突然巻き込まれて翻弄される話が『世にも奇妙な物語』には多いのだが、その状況に巻き込まれた人間が抱いた複雑な心境がしっかりと描けたのは、草彅の演技に説得力があったからだろう。
また、今回の『永遠のふたり』では星護が演出を担当している。星は共同テレビのディレクターとして、フジテレビのドラマを多数手がけており、古き良きハリウッド映画を思わせるクラシカルで温かみのある映像表現に定評がある演出家だ。
フジテレビでは、『放課後』や『じゃじゃ馬ならし』といった若者向けドラマや、三谷幸喜の出世作となった『警部補・古畑任三郎』を90年代に手がけ、トレンディドラマとは違うフジテレビドラマの様式の一つを作った映像作家だと言って間違えないだろう。
『いいひと。』以降、草彅は星のドラマに多数出演している。中でも“僕シリーズ”と呼ばれる、余命1年の教師を演じた『僕の生きる道』、自閉症の青年を演じた『僕の歩く道』といったテレビドラマや、大腸癌で余命1年を宣告された妻のために毎日1作の短編小説を書く小説家を演じた映画『僕と妻の1778の物語』は、俳優・草彅剛のブランドイメージを確立した代表作である。
この3作に、平野眞がチーフ演出を務めたドラマ『僕と彼女と彼女の生きる道』を加えた“僕シリーズ”は、大きく分類するならば、観客の感動を誘う「ヒューマンドラマ」ということになるのではないかと思う。
どの物語も、病気や死が背景にした家族や恋人の物語であるため、あらすじだけを抜き出すと、偽善的なものを感じて苦手意識を抱く方もいるかのもしれない。
しかし、草彅の芝居は良い意味で体温が低く、ドライで醒めている。