『初恋、ざらり』を貫く「おんなじ」の難しさ 簡単に結論付けしない“苦さ”を噛みしめる
水商売で働きながらシングルマザーとして有紗を育ててきた冬美(若村麻由美)の葛藤と、不器用な愛情が胸を打つ。ぶっきらぼうに突き放しながらも、冬美は有紗に障害者の現実を教え、自立を促す。有紗の「私のこと、産まなきゃよかったって思ってる?」という問いかけに答えた冬美の言葉が、この作品のコアな部分を担っていると感じた。
「思った……ときもあった。それぐらい許しなさいよね。大変なのよ、人間ひとり育てんのは。でも、あんたがいたから頑張れたのもホント。他にもいるでしょ。あんたのために頑張ってくれた人。あんた、それがなんだかわかってる? いい恋したんだね」
最終回では、別々の道を歩き出した2人のその後が描かれる。予告で有紗が語っていた岡村に対する想い、「この世界のどこかで、幸せに暮らしていますように」は何を意味するのだろうか。物語の結末として2人が一緒に生きても、別々に生きても、どこにいても、有紗は岡村の幸せを心から祈る。自分の心にとことん向き合って、その境地に達したということだろう。有紗の生涯一度の「初恋」に、再び胸がツーンとなる。
障害者と健常者に限らず、どんな属性の人も、愛し合う者どうしでも、家族でも、「おんなじ」にはなれない。だからこそ、違いを認め、尊重し合い、自分も他者も受け入れることが大事ーーと言うは易しで、その難しさを、この作品は描いている。けれど、これだけは言える。社会規範が決める「普通の幸せ」などというものは、実はどこにもない。どんな形であれ、有紗と岡村が自分自身で決める、彼ららしい、彼らだけの「幸せ」に辿り着けることを祈ってやまない。
■放送情報
ドラマ24『初恋、ざらり』
テレビ東京ほかにて、毎週金曜24:16~放送
出演:小野花梨、風間俊介、尾美としのり、熊谷真実、西山繭子、浜中文一、若村麻由美
原作:ざくざくろ『初恋、ざらり』(CORK/KADOKAWA)
脚本:坪田文、矢島弘一、池田千尋、紡麦しゃち、藤沢桜、上野詩織
監督:池田千尋、七字幸久、倉橋龍介
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:北川俊樹(テレビ東京)、廣瀬雄(東北新社)
OPテーマ:a子「あたしの全部を愛せない」(londog)
EDテーマ:ヒグチアイ「恋の色」(ポニーキャニオン)
音楽:元倉宏、小山絵里奈
制作:テレビ東京/東北新社
制作協力:楽映舎
製作著作:「初恋、ざらり」製作委員会
©「初恋、ざらり」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/hatsukoizarari/
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