『GAMERA -Rebirth-』が見せた、「ガメラ」作品の新たな可能性 課題はバランスの調整?

ガメラ“再生(Rebirth)”の可能性

 一方で、それらをCGで表現した映像には、正直なところ不満を感じる部分もある。大迫力のバトルが描かれながら、その質感はかなり簡素なものだ。もちろん、人間のキャラクターデザインが、平面的な手描きアニメ風なため、全体的にシンプルな画面作りを目指したコンセプトは理解できないことはない。しかし見ようによっては、ひと昔前のゲーム作品のムービーに類似してしまっていると感じられるところもある。その意味で、満を持して発表されたガメラ作品としては、映像の密度の部分に違和感を覚えてしまうのは否めない。

 また、子ども向け作品として享受するにしても、怪獣の与える被害による残酷な描写や、人が死んでしまう衝撃的な展開も用意されている。これを、攻めた内容だと受け取れるかどうかは、視聴者によると思われるが、少なくとも個人的には、一夏の冒険と成長を描いた“ジュブナイル作品”として受け取るには後味が悪く、成長がどうという問題を超えてしまっている部分に首を捻らざるを得ない。本シリーズは、このように大人と子どもを対象にした表現をミックスして、バランスをとろうとした部分が、あまりうまくいっていないのではないか。同時に、少しバランスを調整すれば、劇的に改善できる印象もある。

 いずれにせよ、「ガメラ」という題材が、「ゴジラ」と一線を画する存在であり、『シン・ゴジラ』(2016年)などCGの造形による「ゴジラ」が脚光を浴びたように、「ガメラ」作品がまた違った魅力をCGで発揮できるポテンシャルを本シリーズで見せたことは、プラスにとらえることができる。世界のクリエイターや映画会社は、ここからインスピレーションを与えられたのではないか。

 世界を席巻しているコミックヒーロー映画が、DC作品とマーベル作品でテイストが差別化されたように、「ゴジラ」より親しみやすく、アクロバティックで刺激的なバトルが楽しめる、明快な要素を持った「ガメラ」は、同じように世界規模で期待される大作として、依然として“再生(Rebirth)”する可能性を秘めているのだ。

■配信情報
『GAMERA -Rebirth-』
Netflixにて配信中
キャスト:金元寿子、松岡禎丞、豊崎愛生、木村昴、宮野真守、早見沙織
原作:KADOKAWA
監督:瀬下寛之
副監督:井手恵介
シリーズ構成:猪原健太、瀬古浩司、瀬下寛之
脚本:猪原健太、瀬古浩司、山田哲弥、瀬下寛之
制作:ENGI
製作:GAMERA Rebirth 製作委員会
©2023 KADOKAWA/ GAMERA Rebirth Production committee
公式サイト:https://gamera-rebirth.com/
公式X(旧Twitter):@gamera_rebirth

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