『GAMERA -Rebirth-』が見せた、「ガメラ」作品の新たな可能性 課題はバランスの調整?

ガメラ“再生(Rebirth)”の可能性

 第1作『大怪獣ガメラ』が1965年に公開されてからこれまでに、数々の映画シリーズが公開され、メディアミックスにて関連作がリリースされてきた、怪獣ヒーロー「ガメラ」。この度Netflixから、その新たなアニメシリーズ作品『GAMERA -Rebirth-』の配信が開始された。

 今回の世界に向けての配信は、今後の「ガメラ」の展開にも繋がる“試金石”と呼べるものといえる。果たして、その出来はどうだったのか。ここでは作品自体の出来や、それが世界に配信される意味について考えていきたい。

 巨大なカメ型の怪獣で、口から火炎を放出したり、回転しながら飛行したり、特技を応用させながら数々の敵怪獣と戦ってきた、ガメラ。権利元が異なる怪獣王「ゴジラ」の重量級といえるどっしりとした印象に比べると、より技巧派の活躍ぶりを見せてきたといえる。そして何より、子どもたちの味方として戦ってくれる存在でもある。「平成ガメラ」と呼ばれる3部作においては設定が変更され、そのイメージを幾分ダークに、リアリティを重視する変化がもたらされている。

 本シリーズは、大映でのシリーズが終了し、「平成ガメラ」が生まれる前の時期にあたる、1989年の夏を物語の舞台にしている。この理由の一つはおそらく、双方の設定に鑑賞しないことを想定しているとともに、ガメラのキャラクターを、これらのシリーズの中間の位置に置いているためだと考えられる。そして、設定や描写の点で双方のシリーズの要素が部分的に使用されることによって、作品全体のトーンや演出の方向性なども、中間的な印象が強められていると感じられるのだ。

 本シリーズの中心で描かれるのは、あくまで“子どもたちの成長物語(ジュブナイル)”である。これは、平成3部作の後に製作された『小さき勇者たち~ガメラ~』(2006年)に通じるコンセプトでもある。そして、日本人の子どもが外国人の子どもと交流するといった、昭和のシリーズの内容も含まれている。かと思えば、SF的な趣向とリアリティ、自衛隊の活躍を印象づける部分は、やはり平成3部作を想起させられる。

 つまり本シリーズは、昭和、平成の『ガメラ』シリーズの要素をそれぞれに受け継ぐことで、これまでの作品を愛してきたファンを楽しませようとする意図を持って提出されていることが分かる。まだ携帯電話が一般に普及されていない時代、本シリーズの主人公となる、小学校卒業を前にした夏休みを過ごしている親友同士の子どもたちが、お小遣いを出し合って無線機を購入し連絡を取り合おうとしているというノスタルジックな物語設定は、昭和と平成の境を中心に、前後の世代に共感できるものとなっている。

 そんな主人公たちに救われたガメラは、子どもたちの危機を救うため、次々と敵怪獣を打ち倒していくこととなる。戦いなかで傷ついきながら、何度も立ち上がるガメラの姿は健気で、思わず応援したくなってしまう。ここがガメラ作品の肝といえる部分だろう。敵となるのは、過去のシリーズに登場した怪獣たちが、新たにリデザインされたものだ。

 先行して製作されたゴジラのアニメ映画シリーズ『GODZILLA 怪獣惑星』(2017年)が、幻惑的といえる脚本で観客の期待をコントロールし、ときに裏切りながら娯楽表現に転化させていたことを考えると、本シリーズはそれとは対照的に、怪獣同士の戦いを真っ向から見せていく趣向となっている。陸、海、空とさまざまな環境でおこなわれるバトルは、“見たいものを見せる”という意気込みが感じられる。

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