『らんまん』神木隆之介が表現し続けた強さと優しさ 万太郎の“人生の証し”は人々の中に

『らんまん』万太郎の人生の証しは人々の中に

 『らんまん』(NHK総合)第120話のキーワードは「証し」。残り2週という佳境に入っている本作のこれまでの歩みを振り返った時、万太郎(神木隆之介)が印象的に「証し」という言葉を使っているシーンがあった。それは第51話にて、万太郎が大畑印刷所で初めて植物画を刷る場面。「ここまで来た。あとちっと、あとちっとで証しができる。この国の植物学に、わしが最初の一歩を刻むがじゃ」と、万太郎は竹雄(志尊淳)に語りかける。

 この頃の万太郎は高藤(伊礼彼方)と舞踏練習に励む寿恵子(浜辺美波)を迎えに行くため、雑誌創刊のための技術を日々磨いていた。それはまだ何者でもなかった万太郎が、植物学者として認められるための証しを手に入れるため。一方で、第120話のラストに竹雄が万太郎に告げる「ここにある全てが……証しじゃ」というセリフで、その意味は大きく変わってくる。

 脚本の長田育恵はインタビューの中で、「最終週は『継承』が大きなキーワードになっています」(※)と語っており、そのテーマはすでに第24週「ツチトリモチ」で助走として走り始めているように感じられる。

長田育恵が『らんまん』に込めた“開花”と“継承” 脚本執筆は「幸福な時間でした」

世界でも異例な約半年にわたり毎日(平日5日間)の放送があるNHK連続テレビ小説こと朝ドラ。多くの視聴者から愛されている現在放送中…

 モデルとなっている牧野富太郎が生涯に集めた標本は40万点以上。万太郎も同じく長屋いっぱいに敷き詰められた標本をどのようにして後世に受け継いでいくかは残り2週での大きなテーマとして描かれていくことであり、ここでは万太郎が胴乱と野冊を手に泥臭く地べたを行き、植物採集に出かけ集めた標本を讃えながら、同時にお目付け役として、初代助手として、そして一番の理解者としてそばにいた竹雄との喜怒哀楽の日々の証しでもある。第25週「ムラサキカタバミ」で起こる出来事を考慮すると、その意味合いはまた変容してくるが、本記事ではここまでとする。

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