『VIVANT』堺雅人の“まともさ”に裏切られる快感 別人格・Fは消えてしまうのか?
「敵か味方か、味方か敵か」
ついに最終回を迎える日曜劇場『VIVANT』(TBS系)。初回放送までタイトルと一部の出演者以外の情報は明かされず、主人公を演じる堺雅人の役柄もストーリー自体も伏せられていた。
蓋を開けてみると、堺扮する乃木憂助は丸菱商事・エネルギー事業部2課課長という商社マンとしての顔と、国内外で民間人に紛れて諜報活動を行う特殊先鋭部隊“別班”の一員という2つの顔を持っていた。さらに、第1話の砂漠シーンから堺が同一画面上に2人登場し、普段の乃木とは異なる堂々とした口ぶりで窮地にも全く動じない別人格の“F”が乃木自身を叱咤激励していた。
エリート商社マンとは言え、同期の出世レースに敗れた冴えない乃木は、社内でも誤送金事件の犯人として疑われ、最初はやり手の公安の刑事・野崎(阿部寛)の目も欺くほど、いかにも人が好さそうで真面目でヘタレな表の顔を持ってして、あくまで彼は“世界の渦に巻き込まれた側”だと周囲も視聴者をも信じ込ませた。
前半は、誤送金事件に巻き込まれたのが運の尽き、バルカ当局のチンギス(Barslkhagva Batbold)らに訳もわからず追われる善良な一般市民・乃木として視聴者と最も近い視点にいるかのように思わせておきながら、実のところ我々はその真相を追う乃木自身のことも何も知らないという構図が見事だった。これが成立していたのも堺が持つ“まともさ”ゆえのことだろう。
自衛隊の中でも選りすぐりのエリート集団で、目的のためには手段を選ばず暗躍する“別班”の一員としてのブレなさや迷いのなさは『半沢直樹』シリーズ(TBS系)の主人公・半沢とも通ずるところがある。