『ホテルデルーナ』と『トッケビ』に共通点? IUの華やかなファッションやメイクにも注目
また、この物語に欠かせないのはホテルデルーナ従業員たちだ。客室長のチェ・ソヒ(ペ・へソン)は自分が嫁いだ一族に恨みがあるため、血筋が途絶えるのを見届けるまでホテルで働いている。科挙を首席で合格したというキム学士(シン・ジョングン)は、自らの恥ずかしい過去が忘れ去られるまで待ち続けている。そして朝鮮戦争中にホテルにやってきたヒョンジュン(P.O)は、親友に殺されたという過去を持ち、唯一の家族である妹がホテルにやって来るのを待っている。
働き手にもそういった悲しいストーリーがある中で、ホテルに来る幽霊や町に彷徨っているまま成仏できていない幽霊たちにも心残りがある。盗撮されたトラウマを抱えたまま自殺した女性やいじめられて殺された高校生、チャンソンの親友であるサンチェス(チョ・ヒョンチョル)の彼女で、交通事故で亡くなったベロニカ(ソ・ウンス)、そして行方知らずだったチャンソンの母までもが登場するが、チャンソンは一人一人のストーリーに寄り添い、無事に転生できるよう彼らを三途の川まで見送ろうとする。そんな誠実な姿を見ているからこそ、神はマンウォルと結び付け、重要な役割を任せたのだろう。ちなみに、その全てを司っている麻姑神は、中国に伝わる仙女のことで、長寿の象徴でもある。痒い所に手が届くグッズ・孫の手の由来にもなっている神だ。
また、ホテルでの話という意味では、『キング・ザ・ランド』のように一流のホテリエが登場し、施設には「プール」として太陽と風の調整が可能な海があったり、100階ほどの高さのバーラウンジがあったりと、雰囲気を楽しむことができる物語でもある。もし、天国に行く前にそんなホテルがあるのなら、万が一死んでも少しは幸せな気持ちのまま、次なる人生を迎えることができるだろう。
さらに、本作は『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』に似ているという話もある。確かに、人間が幽霊を見ることができる点や、前世の生まれ変わりと現世でも対立する点、ホテル経営をしている点などリンクする展開は多い。本作ではそれに加えて、目的ごとにコロコロ変わるマンウォルの華やかなファッションやメイクにも目を奪われるに違いない。
タイトルの通り、この物語の真の主人公は月でもあった。月の宿、マンウォル(韓国語で満月)、そしてチャンソンとマンウォルがお互いに愛を告げた時には大きな満月が背景にあるなど、月は常に彼らを照らし続け、何よりも近くに存在していた。満月の日はホテルに来る幽霊が多かったり、新月の日には人間の目にも幽霊が見えるようになったり。人間の体や気持ちは月に左右されるという深い結びつきがあるからこそ、ファンタジーでも身近に感じられる物語になっている。きっと、このドラマを観た夜は空を見上げたくなるはず。そして月を探してみてほしい。満月ならば、ホテルデルーナは大忙しだろう。
■配信情報
『ホテルデルーナ』(全16話)
Netflixにて配信中
出演:IU、ヨ・ジング、シン・ジョングン
原作・制作:オ・チュンファン、ホン・ジョンウン、ホン・ミラン
(写真はtvN公式サイトより)