『愛の不時着』『梨泰院クラス』などのスタジオ2社が米国進出 韓国エンタメさらなる躍進へ
アメリカにおける韓国及びアジア系コンテンツの需要が高まっている。5月中はアジア・太平洋系米国人文化遺産継承月間(Asian American and Pacific Islander Heritage Month)としてさまざまなイベントや特集が行われていたこともあり、『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンやK-POPスターの快挙を引き合いに出す必要もないくらい、多くの作品やタレントが日々メディアを賑わせている。そんななか、躍進中の韓国ドラマ・映画の制作会社が揃ってアメリカ市場参入を表明した。
『愛の不時着』『サイコだけど大丈夫』『ヴィンチェンツォ』などNetflix配信で世界的ヒットとなったドラマシリーズを手がけるスタジオドラゴンは、オラクルのラリー・エリソンCEOの息子、デヴィッド・エリソンが率いるスカイダンス・テレビジョンとApple TV+向けのドラマシリーズ共同制作で合意したと発表。スタジオドラゴンは、ポン・ジュノ監督のアカデミー賞受賞作品『パラサイト 半地下の家族』を手がけた韓国のエンターテインメント企業CJ ENMの傘下にあるスタジオ。今回のApple TV+との契約に基づき、スタジオドラゴンとスカイダンス・テレビジョンは、ベストセラー小説原作のコメディシリーズ『The Big Door Prize(原題)』を『シッツ・クリーク』のスタッフを迎え制作する。今作は韓国企業が世界の視聴者に向けてオリジナルのドラマシリーズをアメリカで制作する初めての試みとなる。また、IUことイ・ジウン主演の『ホテルデルーナ ~月明かりの恋人~』など4作品を共同で英語リメイクすることも発表されている。
『梨泰院クラス』、BBCドラマ『女医フォスター 夫の情事、私の決断』をリメイクした『夫婦の世界』や韓国の受験戦争を描いた『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』などのドラマシリーズで知られるJTBCスタジオは、韓国のメディア企業中央日報グループ傘下のケーブル局JTBCなどに作品を配給している。6月1日、JTBCスタジオは『ディキンスン ~若き女性詩人の憂鬱~』(Apple TV+)、『Mare Of Easttown(原題)』(HBO Max)など、評価の高いドラマシリーズを多く手がける米国制作会社Wiipの買収を発表した。昨年からWiipに出資していた同社は、リメイクやオリジナル企画、配給などで協働し、今後は日本や東南アジアにも進出する予定だという。
スタジオドラゴンは、Netflixとの間で2020より3カ年の作品供給契約を締結。またこのパートナーシップの一環として、スタジオドラゴン社株式の4.99%をNetflixが保有している。系列局のtvNやOCN放送の作品供給以外に、『Sweet Home -俺と世界の絶望-』などのNetflixオリジナル作品制作も手がける。一方のJTBCスタジオとNetflixは2017年から作品供給契約を結び、2020年に複数年の契約を更新している。韓国の2大スタジオが揃って米国進出を発表した今後、2社とNetflixとの関係がどう変化していくのかも見ものだ。
新型コロナウイルスによるパンデミックはNetflixやディズニープラス、Amazon Prime Videoなどのストリーミングサービスの攻勢を加速させたが、同時にアジア系コンテンツへの興味も激増。LAタイムズの記事によると、2019年からの1年間で韓国語コンテンツ需要は66%上昇したという。米国のストリーミングサービスもこぞって韓国語作品をラインナップに含め、韓国のストリーミングサービスwavveとNBC系列のPeacockが提携、アジア系コンテンツを多く揃える楽天Vikiは米国HuluやNetflixに作品を供給している。