「みるアジア」1周年記念で登場 『大江大河』『未来の僕から君へ』で青春の“あの頃”を懐古
大人のための青春ドラマ『未来の僕から君へ Waiting For You In The Future』
近年の中国でヒットした映像作品の特徴としてあげられるのは、大きな時代の変化の中で青春を過ごした「あの頃」への懐古をテーマにしたものだ。『大江大河』とともに「みるアジア」1周年記念作品として配信されている青春ドラマ『未来の僕から君へ Waiting For You In The Future』も、趣はがらりと変わるが、その流れを汲んでいる。
主人公のハオ・フイグイは、大学で教師をしている37歳。仕事が嫌いで、まだ独身。少年のままオジサンになったような男で、いまだに初恋の相手・ワン・ウェイシャオのことを思い続けている。そんな彼があるきっかけで20年前にタイムスリップ。17歳の自分、リュウ・ダージーに出会い、彼のクラスの担任教師になってしまう。青春時代の失敗をやり直すチャンスを得たフイグイ。勉強も家族関係も恋愛もうまくいかないダージーを成功へ導こうと奮闘するフイグイだが……。
中国では近年、タイムスリップものが大流行りだ。高校が舞台の青春学園ドラマも人気のジャンルだし、あらすじだけ読むと、それほど目新しい題材ではない。それでもこの作品は、レビューサイト「豆瓣」で2019年配信の中国ドラマで首位の評価を獲得。好評の理由の1つに、脚本の巧みさがある。初恋の人、ウェイシャオをはじめ、個性豊かな同級生たち、家族や先生たち、バラエティ豊かなキャラクターの造詣がしっかりしている。そして何と言っても、誰もが身に覚えのある「もう一度、人生やり直したい」という願望をかなえながら、37歳のフイグイ自身も癒やされ、成長していくという、大人も共感できるストーリーが他の青春ドラマとは一線を画す。
日本人にもどこか懐かしい高校生活
ドラマの大部分は約20年前の世界を舞台に展開する。20年前の中国で流行ったゲーム機や、音楽なども、日本人の私たちが観てもどこか懐かしく、岡本真夜の「Tomorrow」の中国語カバーなど、当時の中国の流行歌がたくさん流れるのも楽しい。中国の高校生は、日本のような制服を着用せず、ほとんどの場合、体操着や私服など動きやすい格好で登校。なぜか青いジャージの体操着率が異様に高く、これは中国ドラマファンの間ではお馴染みの光景になっている。現在は、大学に進学する学生が増え、大卒であっても就職難という状況に陥っている中国だが、当時は将来“勝ち組”になりたいなら「大学進学が人生を決める」と言わんばかりに、受験を中心に学校生活がまわっている。
本国での配信時はキャスティングも話題になった。注目されたのは、17歳のダージーを演じる主演のフェイ・チーミン。達者な演技を見せているが、実は本作で芸能界デビューしたという新人で、しかもTikTokで注目された演技の素人だった。若手であっても、演劇や映画の専門大学を卒業していたり、オーディション番組で勝ち抜いてきた経験があったりと、何らかの基礎のある俳優が主役を張ることが多い中国では異色の大抜擢だった。一方、37歳のフイグイを演じるリー・グアンジエや、ウェイシャオ役のスン・チエンは演劇の名門大学を出ている実力派。他のキャストも含め、違う畑出身でもいいケミストリーを生んでおり、人口14億の国の俳優の層の厚さに驚かされる。
紹介した2作品に共通するのは、活気のあった時代を懐かしむと同時に、前向きな気持ちになれるドラマだということ。中国では近年、「正能量」（ポジティブなエネルギー）という言葉をよく聞くようになったが、エンターテインメントからもそんなエネルギーを発信・受信したいという傾向を感じる。それだけ人々がポジティブであることに疲弊しはじめたのかも……と考えると複雑だが、そうした空気も含めて、日本人にとってどこか身に覚えがあるのではないだろうか。
■配信情報
『大江大河1～大いなる夢への挑戦』
みるアジアにて独占配信中
出演：ワン・カイ、ヤン・シュオ、ドン・ズージェン、トン・ヤオ、ヤン・リーシン
監督：孔笙
脚本：袁克平
©︎Daylight Entertainment CO.,LTD
『未来の僕から君へ Waiting For You In The Future』
みるアジアにて独占配信中
出演：リー・グアンジエ、フェイ・チーミン、スン・チエン、シン・ユンライ
監督：薛凌、張超理
©︎BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO.,LTD.
■サービス情報
「みるアジア」
韓国・中国・タイBLといったアジアドラマの配給、VIDEO発売業務を手掛ける株式会社コンテンツセブンが運営する動画配信サービス。世界の名作ドラマを語学学習者にもおすすめの二か国語字幕（日本語＋原語同時表示のオリジナル字幕）など、独自の字幕で配信している。
https://www.miruasia.com/
