「みるアジア」1周年記念で登場 『大江大河』『未来の僕から君へ』で青春の“あの頃”を懐古

「みるアジア」で青春の“あの頃”を懐古

 開設から約1年となるアジアドラマの配信サイト「みるアジア」。日本未公開の新作や名作ドラマの配信、日本語と原語の字幕も入れるようにした「二か国語字幕」など、他サイトにはない機能が魅力のサイトだ。そんな「みるアジア」では1周年記念として、中国ドラマ『大江大河1~大いなる夢への挑戦』、『未来の僕から君へ Waiting For You In The Future』の2作品が独占配信されている。どちらの作品も本国で高く評価されていた作品。特に「みるアジア」にて配信開始以来視聴ランキングで長い間1位をキープしている作品が、『大江大河』だ。本稿では、『大江大河』、『未来の僕から君へ』の2作品の見どころを紹介する。

 1978年から1992年の激動の中国を舞台に、政治的理由で差別されてきた家庭の青年が、苦労と努力の末に身を立てて、時代の荒波にもまれていく姿を描いた人間ドラマ。本国で2018年に放送され、大ヒットを記録した。

 中国でこの作品が大ヒットした最大の理由は、急速に豊かになっていく活気に満ちた時代への懐古だろう。日本でいうと映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)のヒットの理由に近いかもしれないが、『大江大河』は国の経済政策の大局の変化をよりダイナミックに切り取ると同時に、それに伴う人々の生活の変化や当時の庶民の暮らしを丁寧に描いている。

ダイナミックな立身出世物語『大江大河1~大いなる夢への挑戦』

『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD
『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD

 物語は、毛沢東が展開した政治運動「文化大革命」が終わって人々が正常な暮らしを取り戻し、大学入試が再開された1978年から始まる。主要人物は3人。ともに地方の田舎の出身だ。

 秀才のソン・ユンフイは、大学進学のチャンスをつかみ、国営企業のエンジニアとして出世していく。農民のレイ・ドンバオは、柔軟な発想と持ち前のリーダーシップでさまざまな事業と改革を推し進め、自分が書記を務める村を豊かにしていく。ユンフイと同じ町で育ったヤン・シュンは、マントウ(蒸しパン)売りから身を起こし、商売でのし上がっていく。

 国営企業、農村の経済、個人事業主。3人の人生を通して、ここ数十年の中国経済の経済主体を分かりやすく追える語り口になっており、時代背景に詳しくなくても、その怒濤の展開に続きが気になって止められない。「経済発展の流れを追う」というと難しく聞こえるかもしれないが、それぞれの家族のドラマ、組織の権力争いなども絡み合い、人間ドラマとして見応えがある。

中国の独特な文化風習

『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD
『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD

 もう1つ、このドラマの人気の理由に、衣装や美術へのこだわりがある。今から40年ほど前の中国の暮らしを再現しているわけだが、中国のここ40年の変化は、日本のそれとは比べものにならない。たとえば、序盤に登場するドンバオとユンフイの姉、ユンピンの婚礼の場面は中国の伝統的な田舎の結婚式の様子が再現されていて、目にも楽しい。新郎が村人たちを引きつれてソン家に花嫁を迎えに行く隊列の賑やかさ、ユンピンが身につける“赤いジャケットにベージュのパンツ”というおしゃれとは無縁だった当時の素朴な“花嫁衣装”。新婚夫婦の部屋に貼られた切り絵、縁起のいい赤いカバーがかけられた寝具など、細部にこだわった小道具や当時の服装を再現した衣装は見どころだ。

 数々の困難を乗り越えて身を立てていく主人公たちの姿に力をもらえる作品で、時代背景に詳しくなくても楽しめるが、当時の中国社会の特殊な背景を知っていたほうがより解像度が上がるポイントもある。たとえば、ドラマの序盤でユンフイとユンピンの姉弟が大学進学を阻まれる理由として頻繁に語られるのが、「出身階級が悪い」ということだ。2人の父親には医術の知識があり、国民党のために働かされた“反革命的な知識分子”の過去があった。文革終結から間もない当時、それを“出身が悪い”と差別され、2人とも進学できる点数を取っているのに地元政府の幹部から申請を邪魔される。

『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD
『大江大河1~大いなる夢への挑戦』©︎Daylight Entertainment CO.,LTD

 また、ユンピンとドンバオが結婚を考え始めた頃、ユンピンの父が眉をひそめるのが、ドンバオが「農村戸籍」であるということ。一方、ドンバオの村では「都市戸籍」の嫁が来ると盛り上がっている。中国の戸籍は今でも「都市」と「農村」で分けられており、さまざまな違いがある。現在、両者の不平等の解消は進みつつあるものの、かつては農村戸籍の農民は都市に働きに出てきても、医療保障が受けられない、子供は公的な教育を受けられないなど、多くの問題を生んできた。

 主人公たちと同世代の50代、60代の視聴者は、こうした苦労も含め青年時代を追体験し、30代、40代は青春時代に感じた急速に発展を遂げる中国の空気を思い出し、さらに若い世代は親世代から聞かされた「あの頃」を知るーー。そんな具合に、中国では幅広い年齢層に支持され、大手レビューサイト「豆瓣(ドウバン)」では10点満点中の8.8、投稿者の約半数が最高の「5つ星」を付けるなど高い評価を得た。制作会社の東陽正午陽光は、『琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、風雲起こす~』(2015年)、『明蘭~才媛の春~ 』(2017年)など、日本にも紹介されている評価の高いヒット作の数々を生み出してきたプロダクションで、クオリティはお墨付き。俳優たちの演技もすばらしく、青年期からの成長を演じ分けてキャラクターに命を吹き込んでいる。

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