『らんまん』浜辺美波の度胸と話術が人々の心を深く動かす 万太郎に映る坂本龍馬の面影
『らんまん』(NHK総合)第21週「ノジギク」は、寿恵子(浜辺美波)のキャラクターが前面に出ている週である。それは第105話のラストのイラストが「はまべみなみ(22)」と浜辺美波が自ら描いたノジギクであること、さらにその後の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に浜辺が出演していたことが象徴している。
第21週をかいつまんで説明すると、槙野家の総額500円もの借金を返済しようと、寿恵子は叔母のみえ(宮澤エマ)の料亭「巳佐登」を訪ねる。仲居として働くこととなった寿恵子が出会うのは、土佐出身の大財閥で岩崎弥太郎の弟の弥之助(皆川猿時)だった。
弥之助が主催で開いた「菊くらべ」は、菊を持ち寄り競い合う催しで、そこで一等に選ばれた菊は500円で買われ、菊を収集している大隈重信に進呈されるという。借金を完済できる一攫千金のチャンスに、寿恵子は万太郎(神木隆之介)の協力のもと参加。結果は、その催しを開くきっかけとも言える芸者の菊千代(華優希)の菊が一等に選ばれたが、弥之助らの心を深く動かしていたのは寿恵子のノジギクだった。
華やかで堂々とした菊千代の菊と比べて、ノジギクは小さくて素朴。陸軍大佐の恩田(近藤公園)から野次が飛んでいたように、その見た目は「貧相」とも言える。だが、もとを辿れば、ほかの美しい菊は大陸から来た種をもとにして改良を重ねた品種であり、日本に自生していたのはノジギクのみ。この国で唯一の原種の菊、ノジギクは1000年以上前から人の手が全く入っておらず、生まれながらの形を保って咲いている。どちらの菊にも優劣はなし。「ですが、ノジギクとこちらの菊たち、共に揃えば、大陸と海……それから、幾星霜にわたる、日本の人々の創意と工夫に思いを馳せることができましょう」と、寿恵子は万太郎から伝え聞いていた思いを代弁する。