福原遥&深田恭子を応援せずにはいられない 『18/40』が示す理想的で豊かな社会の形
TBS火曜ドラマ『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』のタイトルバックには、いつも、海をバックに、福原遥演じる仲川有栖と深田恭子演じる成瀬瞳子の2人の姿がある。
それは、2人の絆がより深まったきっかけでもあり、有栖の子供の名前の由来ともなった第3話終盤での海での出来事が根底にあるのだろう。だがそれだけでなく、第5話において「この子のおかげで私たち会えたんだよ」と瞳子がまだ有栖のお腹の中にいる彼女の息子・海(山手康暖)について言っていたように、この物語が、まだ赤ちゃんである「海(かい)」という存在を真ん中に置いた、2人の女性の物語であることを伝えているように思う。また、特に第6話の展開は、海の誕生を軸に、有栖と瞳子を愛するたくさんの人々が自然に瞳子の家に集まって、各々自分にできることをする、これからの社会のあるべき姿が描かれていた。
龍居由佳里と木村涼子が脚本を手掛けるドラマ『18/40』は、福原遥演じる18歳の有栖と、深田恭子演じる40歳の瞳子という2人の女性の、年の差を越えたシスターフッドを中心に、家族、友人との連帯を丁寧に描いた作品である。特に各話冒頭をそれぞれの登場人物の独白から始めることで、それぞれの思いのバックボーンを描いていく手法は、主に父と娘、母と娘の間に生じる、愛ゆえの衝突や、世代間の感覚の違いなどを細やかに描写する。
また、初回を観ていてまず印象的だったのは、有栖と友人(出口夏希、長澤樹)、並びに有栖の父・市郎(安田顕)が、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたばかりであるために生じる混乱の中にいる描写である。それによって有栖の「もう大人」という自負と、市郎から見た有栖への「まだ子供」という心配のせめぎ合いが、より今日的なこととして伝わってきた。
次に特筆すべきは演者の素晴らしさである。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』のヒロイン・舞を生きた経験を存分に活かせるこの上ない役柄を得て、より一層輝く福原遥。有栖に惹かれていく様子を、表情の細やかな変化で見事に示す鈴鹿央士。そしてなにより、『ルパンの娘』(フジテレビ系)シリーズの三雲華役など、常に人間離れした美しさで視聴者を魅了してきた深田恭子が、妊娠や結婚のこと、娘を愛するがゆえの母親の思いにどう応えるかといった、働く女性誰もがぶつかる問題に悩んだり、時に恋することに臆病になったりして、一喜一憂する姿は、それだけで新鮮で、応援せずにはいられない。
本作の何より画期的な点は、有栖と瞳子の関係並びに、彼女たちを愛する人々によって構成されたコミュニティを土台として、それぞれのラブストーリーが描かれることだ。前述したように、第6話では、海の誕生を軸に、瞳子の家に人々が集う様子が描かれていた。そしてそれは、「仕事ばっかり」の娘の人生が「気がついたら寂しい人生だったなんてなったらどうしよう」と杞憂する瞳子の母・貴美子(片平なぎさ)を安心させるほどには、瞳子の家が、瞳子が「頑張って仕事をしてきたから出会えた素敵な人たち」でいっぱいであることを示してもいた。もちろん、彼女は今後、有栖たちに「背中を押される」形で自分自身の恋愛と向き合っていくことになり、それによってさらに「幸せを掴もう」とする展開になっていくのだろう。でもその土台には、仕事に打ち込み、完璧なキャリアを積み、時に「お節介魂」を燃やして生きてきた彼女が培ってきた、大切な人々との関係性がある。そのことが何より素晴らしい。なぜならそれは、貴美子の言葉を借りれば、「人を支えるのは家族だけとは限らない」ことの証明だからである。