『無職転生』“桃太郎パターン”を廃した斬新さ ルーデウス抜きで開幕した第2期の衝撃

『無職転生』桃太郎パターンを廃した斬新さ

 主人公が異世界に生まれ変わり、かわいいヒロインたちに囲まれながら新たな人生を歩む。そんな異世界転生作品の中でも、他とは一味違った面白さを楽しめるのが『無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~』(以下、『無職転生II』)である。

 現在第2期が放送中の本作は、『Re:ゼロから始める異世界生活』や『転生したらスライムだった件』、『盾の勇者の成り上がり』などと同じ“なろう系”ジャンルの系譜に連なる作品だ。特別な能力を持つ主人公が仲間を集め、冒険の旅を続けるという、昔話『桃太郎』にも通じる基本パターンが共通している。しかし、『無職転生Ⅱ』はその枠組みを守りつつ、他とは異なる要素を織り交ぜて観る者を引き込んでいく。

 本作が他の転生系作品と圧倒的に異なるのは、出会いだけでなく「別れ」にも重要な意味が込められている点だ。

 この視点で第1期を振り返ると、主人公のルーデウスは、既に数々の別れを経験してきたことが浮かび上がる。まずは、彼を魔法の世界に導いた魔術師ロキシーとの別れ。次いで、魔力災害によってパウロを始めとした家族、そして幼なじみ・シルフィエットとも離れ離れになってしまう。また、エリス、ルイジェルドと共に歩んだ冒険も終わりを迎え、それぞれが別の未来へと歩みを進めることに。こうした多くの別れを通じて、第2期のルーデウスは冒険者として特定のパーティに所属せず、一人で旅路を歩んでいる。

 しかしながら、これはただ単に多くの別れを描くことで他の作品と差別化を図っているということではない。むしろ、別れこそがルーデウスの成長だけでなく、他のキャラクターたちの成長も同じ熱量で感じられる鍵となっている。ルーデウスとともに歩む仲間たちのそれぞれの成長の軌跡が、物語の中で絶妙に交差し合いながら進行しているからこそ、視聴者はルーデウスの成長だけでなく、彼を取り巻く仲間たちの心の葛藤や変化にも共感することができるのだろう。

 その典型的な例が第2期第0話「守護術師フィッツ」だ。第0話ではルーデウスの幼なじみのシルフィエットらしき人物が“フィッツ”と名前を変えて、アスラ王国の第2王女・アリエルの守護術師になる姿が描かれている。内容としては、フィッツとアリエルの信頼関係が垣間見える神回だったが、まさか第2期冒頭から主人公不在で物語が進むとは誰が予想をしただろうか。

「友達が困っていれば助けてあげたい。困っていたら助ける。迷惑なわけないよ」

 襲撃をきっかけに、フィッツのためを思って守護術師の任から彼女を外そうとしたアリエルに、これまで自分の意思を明確に示してこなかったフィッツが放った言葉。これまで旅を追ってきたルーデウスを抜きにした、フィッツ視点での物語にもかかわらず、後半3分のアリエルとフィッツの絆を感じさせるやりとりは胸にくるものがあった。

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