『君たちはどう生きるか』木村拓哉は初見で気付けない? キムタク感のない本物の演技力
「君たちはどう生きるか 木村拓哉 何役」
宮﨑駿によるジブリ最新作『君たちはどう生きるか』を観た後、思わず上記のワードで検索してしまった。おそらく私だけでなく、きっと多くの観客が上記のワードで検索をかけたことだろう。というのも、実際に関連キーワードはほぼ全て「木村拓哉が『君たちはどう生きるか』で何役を演じているのか」にまつわる内容だった。
結論から言えば、本作で木村は眞人の父・勝一役を演じている。改めて思うと観賞後の座席で、「あのキムタクを、まさかモブ役のインコのうちの1匹の声に……」などと考えてしまった自分が少し恥ずかしい。そもそも近年のジブリ映画では、歌手や俳優などのいわゆるプロの専業声優ではない人物をキャスティングしているケースが多い。しかし、そんな中でも、木村は過去のジブリ作品にて輝かしいキャリアがある俳優だ。
木村をスタジオジブリのアニメ声優として印象付けたのは『ハウルの動く城』のハウル役だ。宮﨑アニメの美しい世界観とマッチした、木村の優しげな王子様ボイスが観る人の心を掴んで離さない名作である。
『ハウルの動く城』は何度観ても色褪せない 木村拓哉、倍賞千恵子の声芝居にも注目
『ハウルの動く城』(2004年)は、スタジオジブリ制作による13本目の長編映画で、ダイアナ・ウィン・ジョーンズが書いた海外のファ…
ちなみにプロデューサーを務める鈴木敏夫は、木村のアフレコ時に印象的だったエピソードとして「(木村が)台本を持たずにアフレコの現場にきて、最後まで演じきった」と語っている。(※)もはや都市伝説なのではないかとも思えるレベルのプロ意識だが、実際に映画を観て木村のハウル役を目の当たりにした人なら、このエピソードにも納得がいくのではないか。
Q:木村拓哉さんのアフレコ時に印象的だったエピソードは? 鈴木:台本を持たずにアフレコの現場にきて、最後まで演じきったことです。
— スタジオジブリ STUDIO GHIBLI (@JP_GHIBLI) April 2, 2021
結果として、初となるアニメ声優の仕事ながら、これまでに培ってきた演技力を集結させた『ハウルの動く城』は、木村の声優としてのキャリアに代表作として名を残すことになった。
その後もアニメーション声優として、『REDLINE』ではリーゼントが印象的なワイルドなカーレーサー・JP役、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の謎の男・ジル役など、インパクトのある役柄を任されてきた木村。もちろんそのどちらも演技のクオリティの高さは素晴らしいものであった。しかし、ここまでの役柄を振り返れば、やはりどのキャラクターも“キムタクらしい椅子”に座ったキャラクターであり、印象に残るようなキャラの派手さが本人に寄せられているような印象を受けかねない一面もあったように思う。