『らんまん』を“気持ちよく”観られる理由は? 万太郎に学ぶ頼ることと感謝の大切さ

『らんまん』を“気持ちよく”観られる理由

 そうはいっても、恵まれていることは確かである。だがそこで、第19週のヤッコソウである。ヤッコソウには葉っぱがなく、光合成で栄養を作ることができない。万太郎は、ヤッコソウが椎の木に寄生して養分を得ていることに気づく。自分でできないことは、誰かに頼っていいのだと、自然の摂理は教えてくれる。万太郎が、実家に頼れるときは頼り、妻に頼り、友人に頼るのも自然の摂理と考えれば、疑問も解消できる。

 相手も無理なときは断るし(博物館のひとたちのように)、できると思う人は助ける。無理強いしているわけでないから問題はないのだ。寿恵子なんて喜んで支えている。世の中には、人に頼るのが下手なひとがいるが、思い切って頼ってみることもいいのではないか。とくに、いまの生きづらい世の中には、万太郎のように天真爛漫に人に頼ること。ただし、感謝は忘れないこと。

 その生き方が個人でなく公共性を帯びたものに発展しているのがクサ長屋こと十徳長屋である。実家を畳んだ報告にはじめて東京を訪れた綾(佐久間由衣)は、長屋の人たちが相互協力しながら生きている姿を見て、勇気をもらう。ここは、来る者拒まず、去る者を追わず、でも去ったからといって縁が切れるわけではない。

 差配人のりん(安藤玉恵)が大家のことを話題にするが、名前も出てこない、姿も現さない大家だが、安い家賃で貧しい人の生活の場を作っている慈善の心のある人物なのかもしれない。大家がどんな人なのか気になる。いつか出てくることはあるのだろうか。

 長屋が椎の木、肩寄せ合って生きている人々はヤッコソウにも見えてくる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる