『18/40』思わず涙したドラマ史に残る出産シーン “家族”になった有栖と瞳子

『18/40』ドラマ史に残る出産シーン

 自分の人生を生きることも、母親になることも諦めない。そうは決めたものの、現実は厳しい。チャンスが他の人に回ってしまうと焦るし、自分だけ社会の流れから取り残された気持ちになる。人生は長いとはいえ、一生を決める瞬間は今このときしかないのだから。
そんな18歳で母になる葛藤を描いてきた火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)第5話。

 ついに、有栖(福原遥)の出産シーンが描かれた。しかも、臨場感あふれる長尺で。出産を促す掛け声は実にリアルで、手に汗握るとはまさにこのことだった。

 なかなか進まないお産に、緊急帝王切開の可能性も浮上する。分娩室の前には、ただただ祈るばかりの父・市郎(安田顕)と瞳子(深田恭子)。「頑張れ、頑張れ……」きっと多くの視聴者も市郎と瞳子と同じような思いで見つめていたに違いない。

 同時に、これまで有栖が辿ってきた日々が走馬灯のように巡った。予期せぬ妊娠を一人で抱え込んでいたこと。瞳子と出会い戸惑いながらも一緒に暮らし始めたこと。瞳子との同居を市郎に知られ、ぶつかった日のこと。出産のために休学を決めたが、キュレーターになる夢が遠のいていくかもしれないと落ち込んだこと。「こんないっぱいいっぱいでいいお母さんになんてなれっこない」と自分を責めたこと。そして瞳子から「いいお母さんになんかならなくていいじゃない」「ずっとそばにいるから」と支えられたこと……。

 不安や心配は尽きない。けれど、出産は待ってくれない。考えなければならないことは山程あるけれど、それらを振り切るように、あるいはすべてを受け入れるように、叫び、いきんで、母になっていく。そんな有栖の懸命な様子に涙腺を刺激された。

 出産は命がけ。そうは聞いても、なかなか普段意識することは難しい。でも、こうして命が産まれる瞬間を間近に感じると、改めて見えてくることがある。それは、自分もこうして親から生まれたのだということ。市郎が涙をにじませて祈っていた姿は、きっと有栖が生まれたときにもそうしていたに違いない。そして、瞳子の母・貴美子(片平なぎさ)が有栖に振る舞った野菜たっぷりのミネストローネも、彼女が瞳子を身ごもっているときによく食べていたものだと話す。

 成長するにつれて、親は子に「こう生きてほしい」なんて、親の考える幸せを押し付けてしまうこともあるけれど、産まれるときにはただただその産声が聞こえることだけを待ち望んでいたはずなのだ。だが、親自身も普段はそのことを忘れてしまうのだ。子が親の愛を知る、そして親が自分自身の中にあった子への愛を知る。命が生まれる瞬間に立ち会うというのは、家族の原点回帰なのかもしれない。

 だから、有栖の子どもの産声が聞こえたとき、市郎と瞳子が一緒に喜ぶことができてよかったと思った。よくよく考えたら赤の他人なはずの2人。なのだけれど、「よかったですね」と自然にハグできたこと。それは、有栖が母になったと同時に、この2人も家族になれた瞬間のように見えたからだ。

『18/40』8/15(火) #6 子育てに奮闘するふたり…恋の風の行方…そして元彼との再会

 血縁関係でもない、婚姻関係でもない。それでも、家族になれる。予告を見ると、瞳子も有給休暇2週間を取得して子育てに参加するようだ。これは新しいタイプの育児休業と言えるのではないだろうか。父親の育休取得の必要性が叫ばれて久しいが、子育てを手伝うのは父親だけとは限らない。誰でも身近な人の産後をケアするために、仕事を休むという選択肢があってもいいのではないか。

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