シャルロット・ゲンズブールが語る、カメラを向けて変化した母ジェーン・バーキンとの関係
「母に何かを伝えたい」という思い
――この作品でやり遂げた、と感じるところはありますか?
シャルロット:「いまの母のポートレート」を描きたいと思っていました。1970年代の母がどうだったか、ではなく、いまの彼女の美しさや、その人となりを描きたかった。アーティストとしての彼女、イギリス人女性としての彼女、ちょっとエキセントリックなところがあるような母を描こうとしました。そしてそこに父セルジュ・ゲンズブールのイメージを一緒に出したくないと思っていました。母はこれまで長いこと父とセットで見られることが多かったんです。常に父の亡霊がそこにいるようでした。だから父なしでのパーソナルで親密な、そして私の娘にとっての「おばあちゃん」である母の姿を映し出したいと思いました。編集担当者に「即興的な映像も必要だ」と言われ、カメラを買ってブルターニュの家に私の下の娘ジョーを連れて行ったのは正解だったと思います。彼女がいると私もリラックスでき、母もメイクなしで髪の毛もボサボサのまま、すごくナチュラルな佇まいでいてくれて、とても味のあるよいシーンになったと思います。
――ラストの海辺のシーンもとても美しかったです。シャルロットさんがジェーンさんにイヤホン越しに伝える告白が非常に印象的でした。
シャルロット:この撮影のおかげかもしれませんが「母に何かを伝えたい」という思いがありました。海岸を母に歩いてもらおうとしたとき、何もないと母も退屈してしまうだろうと考え、母に手紙を書いてみたんです。自然に出てきたその言葉は、毎日でも伝えたいことだけれど面と向かってはやはり恥じらいがあって言えないものでした。なので手紙を朗読して、イヤホン越しに母に伝えました。
――撮影を通じて、母ジェーンさんとの関係は変化したのでしょうか。
シャルロット:撮影中、母と毎日のように会い、常に一緒にいられたことは大きな喜びでした。親しみを一層感じられるようになりましたし、お互いへの理解も深まったと思います。私のなかでも以前と比べて、母のことをジャッジするような側面が減ったと思います。撮影が進むにつれて優しい雰囲気になり、最後にはお互いを抱きしめることもできるようになりました。ただ撮影が終わるとお互いそれぞれ日々の仕事や日常に戻り、気づくとまた元のような少し遠慮のある関係に戻っていた、というのが正直なところです(笑)。この映画は私の母と親密でありたい、という願望だと言えます。母に言いたかったことを映画にし、きっと母もそのことをわかってくれていたと思います。
■公開情報
『ジェーンとシャルロット』
ューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開中
出演:ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブール、ジョー・アタル
監督・脚本:シャルロット・ゲンズブール
撮影:アドリアン・ベルトール
編集:ティアネス・モンタッシー、アンヌ・ベルソン
美術:ナタリー・カンギレム
エンディングロール曲:「私はあなたのために完璧でありたかった!Je voulais être une telle perfection pour toi!」
配給:リアリーライクフィルムズ
2021年/フランス/92分
©2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/janeandcharlotte