宇野維正の興行ランキング一刀両断!
鍵となるのはファミリー層? 夏休み興行後半戦の行方を占う
先週末の動員ランキングは、『キングダム』シリーズ3作目の『キングダム 運命の炎』がオープニング3日間で動員70万3500人、興収10億5100万円をあげて初登場1位となった。このオープニング成績は2019年に公開された1作目『キングダム』(最終興収57.3億円)との興収比で152%、2022年に公開された2作目『キングダム2 遥かなる大地へ』(最終興収51.6億円)との興収比で103%。3作連続で50億円超えの可能性も十分にあり得る、見事なスタートをきった。
これで前々週の『君たちはどう生きるか』、前週の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』に続いて、3週連続で初登場作品がオープニング成績10億円超え。しかも、国内アニメーション作品、海外実写作品、国内実写作品と作品のバリエーションの幅もあって、一見すると理想的な夏休み興行の展開にも思える。
もっとも、毎週首位が入れ替わるということは、先行作品の持続力がそこまでない証でもある。スタートダッシュこそジブリ作品最高レベルだったものの、累計では過去のジブリ作品、特に宮﨑駿監督作品の基準には今のところ届きそうにない『君たちはどう生きるか』。シリーズ作品としては過去作と比べても順当ながら、やはり『トップガン マーヴェリック』のような現象化にはいたっていない『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。今後、三つ巴の「夏休み興行の覇権」争いを繰り広げていくには、少々迫力が足りないというのが正直なところだ。
もう一つ気になるのは、『君たちはどう生きるか』、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、『キングダム 運命の炎』、いずれの作品も夏休み興行の勘所となる「ファミリー向けの作品」の要素が薄いところ。これについては、本来そこをガッツリと担うと思われていた『君たちはどう生きるか』が、いざフタを開けてみると子供には取っ付きにくい作品であったこと(個人的には、こういう「答え」ではなく「問いかけ」のような作品こそ子供にも観てほしいと思っているのだが)が、誤算を生んだと言える。
その証拠に、「ゴールデンウィーク興行の覇者」となった『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が、公開から約3ヶ月経ってもいまだにファミリー層を集めてトップ5をキープしている。今週末には『マイ・エレメント』、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』とファミリー層を狙える新作が一気に公開される。特に『マイ・エレメント』は、北米のマーケットでは苦戦したものの、この機に乗じて日本ではピクサー作品久々の大ヒットとなる可能性もありそうだ。
■公開情報
『キングダム 運命の炎』
全国公開中
出演:山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、杏、山田裕貴、髙嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋光臣、平山祐介、片岡愛之助、山本耕史、長澤まさみ、玉木宏、佐藤浩市、大沢たかお
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉、原泰久
原作:原泰久『キングダム』(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
音楽:やまだ豊
配給:東宝
©︎原泰久/集英社 ©︎2023映画「キングダム」製作委員会
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