パク・ソジュン×IU初共演 再起する人間たちの物語『ドリーム ~狙え、人生逆転ゴール!~』

パク・ソジュン×IU『ドリーム』のメッセージ

 『梨泰院クラス』に主演して世界的な人気を獲得し、MCU作品『マーベルズ』にも出演するパク・ソジュン。国民的シンガーとして知られ、俳優としても活躍するIU(イ・ジウン)。この韓国のトップスターの初共演作として配信が開始された映画が『ドリーム 〜狙え、人生逆転ゴール!〜』だ。

 その内容はオシャレな恋愛劇でも、野心がぶつかり合う出世劇でもない、ハートウォーミングなコメディ映画だった。題材となるのは、実在する大会「ホームレス・ワールドカップ」。これは、2003年から毎年おこなわれている、ホームレスを対象にした国別で参加する、ストリートサッカーの世界大会のことだ。

 ホームレスのチームが世界で活躍するまでの姿を描くことで感動に繋げていく……一見、ありがちな展開だと思ってしまうが、本作『ドリーム 〜狙え、人生逆転ゴール!〜』で描かれるのはそれだけでなく、そこから一歩進んだ、現実に対する具体的なメッセージを発信するものとなっている。ここでは、そんな本作が真に何を描いているのかを考えていきたい。

 パク・ソジュン演じる、プロサッカー選手のユン・ホンデは、素行の問題により謹慎処分を受け、ホームレス・ワールドカップ韓国代表の指導者に任命されることになる。だが代表とはいっても、参加者たちはサッカーへの情熱など、まるで持っていない。彼らの多くは路上で雑誌『ビッグイシュー』を販売し、その売り上げで一日を乗り越えることに必死なのだ。

 IUが演じるのは、そんな韓国代表を映像に収め、“感動的”な内容に仕上げようと目論む、ドキュメンタリー番組のプロデューサー、イ・ソミンだ。心ならずも監督となったホンデと、台本通りに進めていこうとするソミンとの関係には軋轢が生じ、ことあるごとに反発し合うようになる。

 とくにソミンのやさぐれた性格はユニークで、この二人の言い合いは微笑ましいシーンとして大きな見どころとなっている。こういった描写は、いかにも恋愛関係へと発展していく前振りとして定番の流れではあるが、本作に限っては、そういうありがちな展開にフォーカスしていくことはない。とくに近年の映画の世界的な潮流は、主題から逸れるような恋愛描写で内容を補強することは、性別の役割を固定化する安易なやり方だとみなされる場合があり、それを忌避する本作の姿勢は、現代的なものだといえるだろう。

 それでは、本作の主題とは何なのか。それは、再起する人間たちの物語だ。登場するホームレスの代表選手たちは、それぞれに辛い過去を抱え、厳しい環境での生活を余儀なくされている。また、ホームレスの仲間たちや支援者以外とはあまり交流がなく、家族と会えない状況が続く者たちが少なくない。社会で生きようとするときに、住所がないという事実は、さまざまな点で不利となることは言うまでもない。

 だが本作は、そんな登場人物たちを過度に同情的には描かず、ホームレスでない人たち同様、性格に問題があったり、不真面目だったりするところも描いている。ソミンはホームレスの境遇を、視聴者を惹きつける要素として強調し、人生から転落した“かわいそうな人たち”として、ドキュメンタリー番組のなかで演出しようとするが、実際はさまざまなきっかけから、家のない状況に陥っただけの人々であり、当然ながらそれぞれに多様な人間性があることが示されていく。

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