『ベイビー・ブローカー』だけじゃない IUことイ・ジウンの俳優としての歩みとその魅力
歌手としてデビュー14年目、俳優としては11年目を迎えるIUことイ・ジウン(俳優活動では本名)。ソロアーティストとしての地位を確立し、俳優としても着実に実力をつけてきた。歌手活動からドラマや映画の出演まで精力的に取り組むイ・ジウンは、自身のことを「俳優、歌手においても欲深い人間」だと話している。
今年の6月に公開された是枝裕和監督による初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』には、韓国を代表するソン・ガンホ、ぺ・ドゥナらと出演。同作は第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、イ・ジウンという俳優が世界から注目される契機にもなった。11月には、日本でも公開が決定している映画『夜明けの詩』で、『39歳』『愛に奉仕せよ』のヨン・ウジンと共演し、出会いや別れを通して自分自身と向き合う人間模様を見せてくれる予定だ。ここからは、イ・ジウンの俳優としての歩みと魅力を深堀りしていきたい。
俳優デビューを果たしたのは、2011年に放送された『ドリームハイ』。未来のスターを目指す若者が集う高校が舞台で、元missAのぺ・スジ、2PMのオク・テギョンとチャン・ウヨン、俳優のキム・スヒョンなどの、当時は新人だったイ・ジウンを含めたキャスト陣が現在は本当のスターとして活躍している作品でもある。2013年には『最高です!スンシンちゃん』、『キレイな男』と主演作が続き、IUのイメージでもある明るくて可愛らしい役が多かった。しかし、『麗<レイ>~花萌ゆる8人の王子たち~』(2016年)からは少しずつ役柄の幅が広がったように思う。高麗時代にタイムリープしてしまったイ・ジウン演じる美容部員のコ・ハジンがヘ・スとして生きる中で、8人の皇子に囲まれた華やかさのある前半と後半にかけて一変するストーリーとともに、ヘ・スの切実さを最大限に表現した演技で物語に引き込んでいた。
作詞・作曲を手掛けるIUは抜群の歌唱力だけでなく、伝えるパワーを持っている。例えば、歌手デビューした15歳から現在の30歳に至るまでの軌跡を表すような曲は、その時々で自分と重ねてしまうし、背中を押される曲は自分宛に手紙を届けてくれるような気分だ。彼女が自らの口で語る時には、必ずひとつひとつの言葉を大切に丁寧に扱っている。それが演者としてキャラクターへの理解度や表現力、脚本やセリフの解釈といった全てに繋がっているのだろう。