『ランガスタラム』はあらゆるジャンルの面白さを凝縮 なだぎ武がインド映画の魅力を分析
個性的な作風と驚異的な熱量を持った『RRR』の大ヒットによって注目を集めているインド映画。
そんな『RRR』で主人公の1人ラーマを演じ、日本でも人気沸騰中のラーム・チャランが「自身の俳優としての転機」と語る作品『ランガスタラム』が7月14日から公開される。
本作でラーム・チャランが演じるのは、難聴を抱えながらも明るく暮らす村人のチッティ。圧政に苦しむ民を救おうと立ち上がった兄(アーディ・ピニシェッティ)をサポートするべく戦う男を熱く演じている。
『RRR』は多くの日本人を虜にしたが、そんな虜になった1人であるお笑い芸人のなだぎ武に、インド映画と本作の魅力について語ってもらった。
『ランガスタラム』はあらゆるジャンルが詰まった欲張り映画
――なだぎさんにとってインド映画の魅力はどんな点にありますか?
なだぎ武(以下、なだぎ):一見、宝塚歌劇団みたいなミュージカルだけど、ミュージカルではない濃厚な映画って感じですね。歌と踊りで華やかだけど、内容はめっちゃ濃いみたいな。『ランガスタラム』なんかまさにそうで、「歌って踊ってる場合ちゃうやろ」みたいなすごいことが起きてるのに、踊ってる(笑)。そういうシーンが急に入ってくるので違和感はあるけど、その違和感が逆に面白いんですよね。
――宝塚といえば、『RRR』を舞台化するというニュースがありました。やっぱりインド映画と宝塚は近い存在なんですかね。
なだぎ:そのニュースを聞いた時、「宝塚なら大丈夫やろな」って安心感がありましたよね(笑)。ビームとラーマがあの大階段から下りてくるところを想像したら、楽しくてしょうがないです。
――なだぎさんもお好きな『RRR』ですが、ああいうパワフルなインド映画は、やはり映画館で観てこそですよね。
なだぎ:『RRR』はいろんな衝撃を受けました。もう、体感5分くらいでしたね。観終わった時、「これはもう一回劇場で観なあかんやつや」と思って3回観に行きました。インド映画って華やかさもありますけど、結構ギラついて尖った内容も入れてきますから、そういう濃い内容もスクリーンで観た時に全然違った印象になると思います。とにかく映画館で観たほうがいいと思います。
――『ランガスタラム』についてもやはり映画館で観るべき作品ですか?
なだぎ:もちろんです。これも非常に濃い内容で、『RRR』とはまた違う衝撃を受けました。映画の序盤は『男はつらいよ』の寅さんみたいだなと思ってたんですけど、最後の方は『バトル・ロワイアル』みたいになるという(笑)。難聴だけど陽気な兄ちゃんの人情もののように始まり、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』みたいに途中から空気が変わっていく。最初はラブコメみたいなやり取りもしてるのに、まさかあんな方向に行くとは思わなかったです。「この世は芝居の舞台(ランガスタラム)、おれたちゃみんな人形さ」という陽気な歌の内容も実はめちゃくちゃ深い内容ですね。難しい作品ではないんですけど、その深さを考えると『RRR』もまだ薄味だったんだなと思わされる部分もありました。
――『RRR』すら薄味に感じさせるような作品なんですね。
なだぎ:そうですね。ピリつき感とか背筋がぞっとするような戦慄がありました。やっぱり人間て怖いんやなと。アクションやダンスなど陽気な要素はたくさんあるんですけど、人の行動は言葉ひとつでも暴力になるし、ボタンのかけ違いで命は奪われていく。陽気な部分で人を惹きつけながら、生きることについて考えさせられるという、政治や社会問題とか、生きていく上で無視できひんものがたっぷりと描かれている。それがこの作品の大きな魅力だと思います。
――この映画は、ジャンルは何かと聞かれても一言で言い表せないほど多くの要素がありますよね。好みのタイプの映画の違いによって、印象がそれぞれ変わるかもしれません。
なだぎ:そうなんですよ。アクションが好きな人、サスペンスが好きな人、ロマンスが好きな人、コメディが好きな人、全員いける気がしますね。誰が観ても何かしら刺さる部分がある、そういう欲張りな映画ですね。ダンスシーンも当然印象に残りますし。この人とは趣味が違うなという人と観に行くと逆に面白いかもしれません。観終わった後の考察や意見がそれぞれ違うものが出てくると思うので。
――今作で印象的なダンスはありましたか?
なだぎ:あれ、腹筋ダンスって言うんですかね。ラーム・チャランのあのダンスの動きは笑いました。すごい動きやなって。
――なだぎさんはご自身のYouTubeチャンネルで『RRR』のナートゥダンスを披露されていますけど、やはりインド映画の踊りをマスターするのは大変でしたか?
なだぎ:めちゃくちゃ大変でしたよ。あの動き覚えるだけでめっちゃ時間かかりましたから(笑)。あのダンスをフルで踊るには相当のエネルギーと練習が必要です。動かしている関節が他のダンスとは違う気がしますね。筋肉も使う箇所が違うので、疲労感が倍くらい違います。