『ウソ婚』長濱ねる演じる八重の生き方に胸が締め付けられる 菊池風磨はハマり役に
人は誰しも、“本音と建前”を使い分けて生きている。たとえば、お土産で苦手な食べ物をもらった時。場合によっては、「これ、食べられないんだよね……」と打ち明けることがあるかもしれないが、大抵は「ありがとう」と喜んだ“ふり”をするはずだ。もちろんそれは、他人を騙すような悪意があるものじゃない。建前とは、人と人とがうまく渡り合っていくために必要な気遣いのひとつだと思う。
しかし、気遣いをしすぎると、相手だけでなく自分を追い詰めることになる。7月11日スタートのドラマ『ウソ婚』(カンテレ・フジテレビ系)のヒロイン・千堂八重(長濱ねる)の生き方を見て、胸がキュッと締め付けられた人も多いのではないだろうか。八重はよく言えば、優しい良い子。けれど、捉えようによっては、都合のいい人に見えてしまう。
それはきっと、八重がお人よしすぎるあまりに、優しさのなかに“嘘”を織り交ぜてしまうからだと思う。困っている人がいるからって、八重のように身代わりとなって仕事を辞めてあげる必要はないが、それでも助けてあげたい……というのなら、「やりたいことができて」なんて嘘をつかなければいい。
彼氏との別れを決意した時もそうだ。向こうが別れを切り出せずにいるのを察して、つい空気を読んでしまう。結局、八重から「別れよっか」と言うことになってしまったが、彼女は別れるつもりなんてなかったし、彼のことを愛していたように見えた。
だが、周囲はそんな八重の“嘘”を、誰も気に留めない。その優しさに気づきもせず、みんな彼女の行動だけを都合よく受け取っていく。
しかし、そのなかで、幼なじみの夏目匠(菊池風磨)だけは、八重の“嘘”にちゃんと気づいてくれていた。きっと彼は、建前の奥にある本音を見抜くことができる人なのだろう。
仕事も住む場所も恋人も失い、どん底にいた八重と、10年ぶりに再会した匠。「男は所帯を持って一人前」という古い考えを持つ取引先の社長・二木谷皓司(鶴見辰吾)を騙すため、匠は八重に半年の期間限定で“ウソの結婚相手”を演じるバイトを持ち掛ける。ちょっぴり意地悪なお金持ちと、お人よしだが貧乏なヒロインによるシンデレラストーリー……と、ここまではよくある物語のように思えるが、実は匠はずっと八重に恋心を抱いていたというのが面白い。