『シッコウ』など“お仕事ドラマ”に新傾向? クローズアップされ始めた“花形”以外の専門職

『シッコウ!!』などお仕事ドラマに新傾向

 一風変わった“お仕事ドラマ”が、7月4日から放送開始になる。伊藤沙莉が主演を務める『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)だ。主人公の吉野ひかり(伊藤沙莉)はひょんなことから“執行補助者”の道に進むことになり、本作では、一般的に聞き馴染みのない職業“執行官”の世界が描かれる。

 執行官とは、裁判で出された結論が実現されない場合に、それを強制的に執行する仕事を担い、強制執行によって金品、不動産などを差し押さえたり、没収したりする。時に嫌われ役、憎まれ役を買って出ながら人々の人生のリスタートに立ち合う執行官の目線を通して、人間の本性や、さまざまな悲喜こもごもが味わえそうだ。何かに執着して手放せなかったり、土壇場になって諦めきれなかったり、本当に大切なものが何か気付いて改心したり……。そこにはとんでもなく泥臭い、時に目を背けたくなるような人間模様が詰まっている。

 本作の“執行官”しかり、ドラマを観て初めてその職業名や実態を知るような裏方の仕事にフォーカスしたドラマ作品が近年増えている。

 『競争の番人』(フジテレビ系)の舞台は“公正取引委員会”だった。W主演を務めた坂口健太郎と杏は公正取引委員会・第六審査、通称“ダイロク”の職員を演じ、独占禁止法に関わる違反行為を取り締まり、経済活動における自由で公正な競争の場を守る“競争の番人”に扮した。談合やカルテルなどの企業の不正と、その裏に隠された真実を暴こうと奔走する姿には胸を熱くさせられた。企業への立ち入り検査や事情聴取、張り込み・尾行などの権限はあるものの、警察の捜査令状のような強制的な権力や逮捕権は持っていないため、時に“弱小官庁”と揶揄されることもある“公取委”が、歯痒い思いもしながらその権限内で根気強く実直に捜査を行う。その地道さの先に待ち受けるのは、痛快でリアリティのある逆転劇だった。

 『競争の番人』同様に、女性主人公が自身の希望ではない突然の異動辞令を受け、徐々にその業務のやりがいに魅せられていったのが『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系/以下『それパク』)の主人公・藤崎亜季(芳根京子)だ。ドリンクメーカーの知的財産部を舞台に、元々開発部員だった亜季は「弁理士」の資格を持つ知財のプロフェッショナル・北脇雅美(重岡大毅)とバディを組み、仲間たちの“汗と涙の結晶”である研究成果を守るために奮闘する。

 『競争の番人』の楓(杏)や『それパク』の亜季のように、業務について全くの未経験者である主人公の存在は、我々視聴者にとってその職業への理解の入り口となり、時に視聴者の疑問を代弁してくれる橋渡し役としても機能してくれる。彼女らのおかげで、一見したところ、自分たちには無関係で小難しそうだと敬遠してしまいそうな仕事内容への理解のハードルが下がり、共に知識を深めていける安心感にも繋がった。そしてこれまでドラマの舞台として描かれたことがなく、あまり表立って目立つことのない仕事ながら、社会にとって必要不可欠で、多くの人が間接的に彼らの活躍に守られていることもわかる。

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