大石静×宮藤官九郎、初タッグで得たものは? 2人の“脚本術”に迫る
「『変だな』と思うことが自然と作品に出ている」
――本作の主人公は、愛媛の三世議員である東海林大志(松坂桃李)と、大志の妻であり国民的女優の黒澤ゆい(仲里依紗)です。夫婦の物語ではありますが、政界と芸能界のバックステージものとして描こうとした意図は?
宮藤:夫婦の物語にすることが決まって、その職業を考えたときに政治家と俳優だったらイメージも大切だし、離婚しづらいかなと考えました。で、政治家や選挙って調べれば調べるほど面白くて。
大石:政治記者の人たちに取材にも行きましたが、本作でも全部盛り込めなかったぐらいたくさんの面白い話を聞きました。
宮藤:Netflixで世界配信ということもあり、世界の人が日本の政治についてちょっとでも知っていただけるのは面白いかなと。政治への意識って、地方と東京では全然違うんですよね。都心の人の多くは政治への意識が希薄だと思うんですが、地方だと、この道を作ってくれたとか、ここになにかを持ってきてくれたとか、自分事として考えている方が多くて。
大石:各地方から選挙で選ばれて国会議員となった政治家は、「国」の立法を担う使命があるわけですが、でも、選挙で当選するために、地元のために働いているという姿も見せないとならない。この矛盾は問題点ですが、日本独特で面白いなと。それは本作の主人公である大志の過剰な地元愛の部分に反映させています。
――政治や芸能人を扱うと社会批評のような要素も内包されますが、その点は特に意識はせず?
大石:それがテーマではないので。
宮藤:ないですね。別に大上段に構えて、「俺は社会にこれが言いたい!」というのはないんです。ただ、なんとなく「変な世の中だな」とは思っているので、それを書いていたらそう受け取る方もいらっしゃるというか。
大石:いまを生きていて、私たちが「変だな」と思っていることが、意識せずとも作品に少しずつ出てしまっているんでしょうね。
宮藤:右とか左とか、そうではなくて、「変だな」と思うことが自然と出ている。そして、出てしまうことについて、それは「カッコ悪いからやめよう」とも思っていないというのが正直な感じです。
――今回はおふたりにとって初の試みとなったわけですが、今後挑戦してみたいことや題材などはありますか?
大石:急に何か目覚めるとかはないですね。
宮藤:僕はまだやっていないことがあるので、それを一つずつ潰していけたらなと。ジャンルもそうですし、役者さんや監督さんも。全部の「やってみたい」が終わったら、(脚本家として)ちょうど終わるんじゃないのかなと思っていますけど。大石さんはどうですか?
大石:私はやりたいことがあるのかどうかわからないです。でも求めてもらえれば、全力で挑戦しようとは思います。前は、やりたいネタがいくつもありましたけど、もう出し尽くしちゃったかも。本作も宮藤さんと一緒だから挑戦できたので。自分がなにかやりたいというよりは、一緒にやりたいと言ってくれる方のために今は頑張る感じかな。また変わるかもですが。
――大石さんは2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』も控えています。
大石:最近は頭の中が、すっかり平安時代です(笑)。『功名が辻』(2006年)のときは戦国時代で、有名な人物も有名な戦も次々あって楽でしたが、今回は資料が本当に少なくて大変です。まったくオリジナルドラマで作っているような感じですね。
宮藤:「これはこうだったらいいな」と考えるのは楽しそうですね。
大石:ヒロインの生没年も不明で、家族もどうなったかもわからないので、ひとつひとつ創作しています。あまりにも私のオリジナルで、歴史ものと言えるかの心配はありますけど、『光る君へ』も皆さんに楽しんでいただけるよう頑張ります。
■配信情報
Netflixシリーズ『離婚しようよ』
Netflixにて、全世界配信中
出演:松坂桃李、仲里依紗、錦戸亮、板谷由夏、山本耕史、古田新太、織田梨沙、神尾楓珠、少路勇介、矢沢心、高岸宏行、前原滉、尾美としのり、池田成志、高島礼子、竹下景子
監督:金子文紀、福田亮介、坂上卓哉
脚本:宮藤官九郎、大石静
エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤菜穂美(Netflix)
プロデューサー:磯山晶、勝野逸未
制作プロダクション:TBSスパークル
製作著作:TBSテレビ