『合理的にあり得ない』天海祐希が役に込めた生きざま あり得なさを突き抜けて自由へ

裁判では合理的な疑いを容れない程度の証明が必要とされる。『合理的にあり得ない』というタイトルは、ロジカルな法律の世界と違う実社会のもう一つの側面を示すものだ。直感先行で行き当たりばったりな涼子の振舞いは、一見したところデタラメに見えるが、弁護士ではない涼子の戦い方として合理的だ。法の網をかいくぐるあり得ない相手には、それを陵駕するあり得なさで対抗することが有効である。相手をだまし返す涼子の手法にまったく問題がないとは言えない。その点に関して、大事な場面で丹波(丸山智己)と連携するなどわきまえており、設定は抜かりない。
身の回りで起こる問題のうち、法律で解決できるものは少数だ。たいがいは立場や人間関係にまぎれてうやむやになったり、感情的な変遷と時間や金で解決することも多く、筆者を含む多くの人は流されて生きているのが実像かもしれない。法律で立証できないことも、ドラマならクリアに決着がつく。それを体現しているのが個人事務所を構える探偵で、自由度の高いキャラクターはドラマ自体の表現の可能性を広げる。これが弁護士なら、より緻密なプロットとリアリティのある決着が求められただろう。
罪を負って再出発した涼子が、探偵業に見出したのは自由そのものだったと言えないだろうか。時に激辛な現実を味わうことはあっても、そう簡単に手放せるものではない。破綻と紙一重のあり得なさは、主人公が手にした自由の形でもある。
■配信情報
『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』
TVer、FODにて配信中
出演:天海祐希、松下洸平、白石聖、中川大輔、丸山智己、仲村トオルほか
原作:柚月裕子『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:光野道夫、二宮崇、倉木義典
プロデューサー:萩原崇、清家優輝
音楽:眞鍋昭大
制作協力:ファインエンターテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト: https://www.ktv.jp/arienai/
公式Twitter:https://twitter.com/arienai_g
公式Instagram:https://www.instagram.com/arienai_g/
























