『合理的にあり得ない』天海祐希が役に込めた生きざま あり得なさを突き抜けて自由へ
『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)最終話は本作らしさが満載の内容だった。
涼子(天海祐希)を陥れた黒幕が諫間(仲村トオル)であることが発覚した前話。なぜ諫間は涼子を排除したのか? 面と向かって問いただす涼子に、諫間は「邪魔だったんだよ。殺されなかっただけでもありがたく思え」と心ない言葉を投げつける。あまりの事態に怒りを抑えきれない涼子は、諫間への復讐を宣言した。
その頃、涼子の傷害事件の相手である椎名(野間口徹)は氷川(阿部亮平)に拉致されていた。諫間に命じられて氷川は椎名を脅迫。技術力のある椎名から、特殊な用途に使うレンズのデータを入手することが目的だった。貴山(松下洸平)の機転で椎名を救出した涼子は「3776」という数字の意味を尋ねる。椎名によるとそれは諫間の「3776計画」に由来していた。
「3776」を聞くと発動する後催眠暗示をかけることで涼子を排除し、プロジェクトの機密漏洩も防ぐ。徹底したガードで何を守ろうとしたのか。疑念は深まる一方だったが、答えは諫間自身の口から語られた。軍事用ドローンの部品を禁輸国に輸出し、現地で組み立てさせる。法律の規制を逃れる手法であり、そのことを知れば涼子は真っ先に反対したはず。だから涼子を排除することにしたのだ。穏便な方法で進めるはずが、事件になってしまったのは誤算だったが。
真実を知ってショックを受けた久実(白石聖)は、プレゼントを置き土産に父に別れを告げた。そうしている間にも、ドローン部品を積んだ船の出港が明日に迫り、涼子たちは氷川が待ち受ける港へ向かった。弁護士の資格を失うにはそれだけの背景があると思ってはいたが、まさか武器輸出という大ごとが控えているとは思わなかった。仇敵であると同時に涼子を見守ってきた諫間が裏切る理由として十分説得力があった。なぜ涼子は弁護士を辞めたのかという本作全体を貫く謎の伏線回収であり、探偵ものとして過不足ないクオリティを示した。