『水星の魔女』兄弟愛をぶつけ合うグエルとラウダも終幕 最終回を前にOP映像の仕様変更も

『水星の魔女』グエルとラウダの兄弟愛

 キャリバーンを駆るスレッタとエアリアルを操縦するエリクトの戦闘は激しさを増していく。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第23話「譲れない優しさ」では、緊迫した戦いの中で、グエルとラウダによる兄弟愛が感じられた。

※本稿には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第23話のネタバレを含みます。

 本編に進む前に強調したいのは第23話からOP映像が変化していたこと。具体的にはキャリバーンとシュバルゼッテの登場シーンが使われ、エアリアルからキャリバーンを操縦するスレッタへと変更が加えられた。これまでグエルのビジュアルが変化するなど、ストーリーが進むにつれて度々映像には手が加えられてきたが、最終回を前に変わったことには正直驚いた。こういう細かなところで、制作陣の強いこだわりが感じられるのはいちファンとしては嬉しい。

 第21話でシュバルゼッテを前にミオリネの敵意を剥き出しにしていたラウダとグエルの兄弟対決は、物語の本筋とは関係ないものの、大きく心を揺さぶられた。ラウダが乗っているシュバルゼッテはプロスぺラから提供されたGUNDフォーマット技術が導入されており、データストームによる影響をもろに受けてしまう。それでもラウダはグエルを説得したかった。ラウダはデータストームに苦しみながらも、父親を殺したことを黙っていたグエルに対し怒りともならない感情をぶつけていく。

 しかし、ラウダの怒りはグエルが父親を誤って殺してしまったことそのものではなく、全ての責任を自分で背負ってしまったことにあるのだ。そうしたグエルの変化を、ラウダはミオリネに責任を押し付けているが、それはラウダなりの兄への愛情の表れのようにも思える。ラウダは愛する兄であるグエルに自分を頼ってほしかった。ラウダはグエルに対して言い放った「魔女に取り込まれた兄さんの代わりに。僕が罪を全て背負う」という発言からも、きっとグエルの罪を共有したかったことが窺える。

『水星の魔女』は“意志”の所在を徹底して描く 決闘シーンは初代ガンダムのオマージュも

“逃げたら一つ、進めば二つ”。作中ではスレッタが自分を奮起させるために何度も登場してきた言葉だが、改めてこの言葉の意味を深く感じ…

 最終的には刃と刃の一騎打ちになってしまうが、斬りかかろうとしたタイミングでグエルがビームトーチを収め、シュバルゼッテに乗ったラウダを抱きしめる。そしてグエルは宣言する。「俺は、もう逃げない。父さんからも、お前からも」と。グエルはグエルで父親を殺めてしまった事実をラウダが許してくれないと思っていた。それはきっと兄弟であるがゆえに、かけがえのない関係を失いたくないという思いもあったのかもしれない。それにしても、グエルまでも死んでしまうのではないかと思われた矢先に、フェルシーが助っ人に来てくれて安堵した。

 あくまでもこれは兄弟間での争いにすぎない。そばでは宇宙を揺るがしかねないクワイエット・ゼロが猛威を振るっている。スレッタとエリクトの戦いが熾烈を極めるが、次々とエリクトの攻撃を交わしていくスレッタの技量はものすごい。パイロットとしても優秀なのがわかる。「僕らのことは忘れて」と話すエリクトに対して、スレッタは「お母さんが泣いてるなら抱きしめてあげたい。傍にいてあげたい。忘れることなんかできないよ!」と叫んだ時にエリクトは俯いて悲しげな表情を見せた。その表情はスレッタを強引にでも止めるしか手段がなくなってしまったことへの葛藤がにじみ出ていたように感じられた。シンクロしたエアリアルはより一層攻撃の手を緩めようとしないが、突然データストームにノイズが走りエリクトの動きが止まる。「どうして!? なんで邪魔するの!」とエリクトは何者かの存在を示唆していたが、その人物(データストーム空間に存在しているエリクトのようなもの?)は一体誰なのだろうか。

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